教養・歴史書評

リアル書店で電子版が買える!?=永江朗

     コロナ禍による“巣ごもり需要”などの要因で、出版市場は前年比で微増もしくは横ばいの傾向が続いている。しかし内訳を見ると紙の書籍・雑誌は縮小が続いていて、電子出版(電子書籍・電子雑誌)の伸びがそれを補っているかたちだ。とりわけ紙の雑誌の市場収縮は激しい。

     そうしたなか、3月25日、紙の出版取次大手のトーハンと、電子出版取次大手のメディアドゥが、資本業務提携を発表した。お互いに株を持ち合い、共同で事業を行う。

     電子出版の市場拡大で出版社は潤うが、書店や取次は蚊帳の外に置かれる。そのため書店界では電子出版に対する反発も根強い。また、書店を応援したいから、と作品の電子化を拒む作家もいる。電子出版の出現は出版産業の構造にくさびを打つようなものとなっている。

     しかし、今回のトーハンとメディアドゥの提携は、出版流通に大きな変化をもたらす可能性がある。

     例えば、新刊書店が電子出版の販売拠点となるかもしれない。筆者が購入する書籍の半数以上は電子書籍だが、「未知の本に出合う」「本を吟味して選ぶ」という点では、リアルな書店の方がネットよりもはるかに優れていると感じる。実際には、新刊書店で見つけた本を覚えておいて、自宅に戻って電子版を購入するパターンが多い。書店をショールームのように使うことに後ろめたさがある。新刊書店で紙版の書籍・雑誌を手に取って確認し、その場で同じコンテンツの電子版を購入できればどんなにいいか。

     トーハンが取引する出版社は約3000社、書店は約5000店。メディアドゥが取引する出版社は約2200社。この規模で「紙でも電子でも、どちらでも購入可能」ということになれば、電子出版のさらなる市場拡大にも役立つし、書店にも利益配分されることになる。

     メディアドゥは発売前の作品を試作段階で書評家や書店員、図書館員などに配布して反応を見る「ネットギャリー」というサービスも行っている。今回の提携でマーケティングがより洗練されたものになる可能性もある。

     紙と電子の融合は書店の生き残りにつながるだろうか。


     この欄は「海外出版事情」と隔週で掲載します。

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