経済・企業挑戦者2021

大庭邦彦 ゴートゥデイシェアサロン代表 共有サロンで美容師の働き方改革

撮影 武市公孝
撮影 武市公孝

 華やかな職業として人気の美容師だが、低賃金や長時間労働などを背景に、離職する人も少なくない。そんな美容業界にメスを入れ、稼げる美容師を生むシェアサロンがいま、話題を呼んでいる。

(聞き手=藤枝克治・本誌編集長、構成=斎藤信世・編集部)

渋谷Sol店は渋谷駅から徒歩4分の立地 ゴートゥデイシェアサロン提供
渋谷Sol店は渋谷駅から徒歩4分の立地 ゴートゥデイシェアサロン提供

 フリーランスで活動する美容師が共同で利用できる個室の美容室(シェアサロン)を運営しています。美容師は利用料を払うだけで、当社の持つ店舗や予約システムを使うことができます。現在は美容師やネイリストなど約350人が登録しています。(挑戦者2021)

 美容師は一般的に、専門学校を卒業後、アシスタントとして美容室に就職し、4〜5年かけ技術を習得、20代半ばで一人前になります。でも月給が25万〜30万円と安く、また休みも不定期で自分の時間を持つことが難しいため、多くの人が独立の道を選びます。そのため美容室は全国で約25万店もあり、店舗過剰な状況です。またお店を作るにも1000万〜1500万円は必要なので、「それならシェアサロンを使おう」という感じで当社を利用する人が多いです。

 利用料は月額1万〜15万円とさまざまで、美容師は自分の働き方に合わせて選択できます。中でも、週3〜4日働き、月間売上額が40万円程度の美容師を想定した月額3万円のプランが人気です。この場合、当社は手数料として売り上げの30%をもらっています。

 登録している美容師の月間売上額は平均で50万〜60万円ですが、インスタグラムで得意な施術を積極的に発信することで、20代前半でも100万円を売り上げる人がいます。

 当社は各店舗にコミュニケーションマネジャーを配置し、美容師同士の関係構築を手伝うなど、働きやすい環境作りにも力を入れています。

 また、予約や決算のシステムも提供しています。ただ集客については美容師自身で行います。今は顧客と美容師が、SNS(交流サイト)で直接交流する時代なので、インスタグラムなどを活用する人が多いです。

夢を与える環境作りが大事

 共同創業者の大池基生取締役はもともとフリーランスの美容師でした。彼は先輩の店の一角を借りていたのですが、人の家に入るのと同じ感覚で、どこか居心地が良くないんです。大池と話す中で、シェアサロンがあれば美容師がもっと自由に楽しく働けるようになると思ったのが当社を作ったきっかけです。

 大学では化学を勉強していましたが、インターネットが普及し始めた頃だったので、不動産サイト「ライフルホームズ」を運営するLIFULL(当時next)に入社しました。働く中で起業意欲が強まり、2007年に、美容室検索サイト「美美美コム」を運営する会社を設立しました。当時は競合もおらず順調でしたが、リクルートが美容予約サイト「ホットペッパービューティー」を始めたことで暗転し、美美美コムは楽天に売却、現在に至ります。

 これまでシェアサロンという概念が一般的ではなかったため、否定的な反応も多くあります。ある程度育った美容師を引き抜いているように見えると。でも、ここで働くことで、こういう夢がかなうとか、具体的なキャリアプランを描けない限り、低賃金で長く働くことは難しいですよね。なので、夢を与える環境作りが大事だと思っています。

 25年までには、商業都市を中心に100店舗を開業予定で、いずれはアジアなどの海外市場も視野に店舗数拡大を目指します。


企業概要

事業内容:フリーランス美容師向けのシェアサロンの運営

本社所在地:東京都渋谷区

設立:2016年10月

資本金:約10億円(資本準備金含む)

従業員数:18人


 ■人物略歴

おおば・くにひこ

 1976年生まれ。99年日本大学生物資源科学部卒業。不動産サイト「ライフルホームズ」を運営するLIFULL(旧next)などを経て、2007年に美容室検索サイトを運営する「美美美コム」を創業。17年にGO TODAY SHAiRE SALON(ゴートゥデイシェアサロン)を設立した。埼玉県出身。44歳。

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