経済・企業挑戦者2021

川口哲平 クラッソーネ代表取締役CEO 家の解体業者探しを手軽に

撮影 武市公孝
撮影 武市公孝

 より良い解体業者選びを手助けする。空き家問題の解決を目指す。

(聞き手=藤枝克治・本誌編集長、構成=市川明代・編集部)

ウェブ上で簡単に条件に見合った工事会社を探すことができる
ウェブ上で簡単に条件に見合った工事会社を探すことができる

 建物を解体したい人と解体業者をウェブ上でつなぐサービス「くらそうね」を提供しています。ウェブサイトで物件情報を入力すると、複数の「おすすめ工事会社」が提示され、その中から条件に見合う業者を選択できます。見積もり依頼や最終契約もオンラインで済ませることが可能です。(挑戦者2021)

 いま、1960~70年代のマイホームブームの時期に建てられた戸建て住宅が老朽化し、空き家が急増しています。2033年には全住宅の30%が空き家になるという試算もあります。気軽に使えるマッチングサービスが、空き家問題の解決の一助になると考えています。

 建物の解体は、所有者である個人や業者が建て替えをする際に、建築施工主であるハウスメーカーやゼネコンに依頼するのが一般的です。ハウスメーカーやゼネコンは下請けに発注し、最終的に孫請け・ひ孫請けの解体業者が仕事を引き受けることになるため、中間マージンによって解体費用がかさんでしまいます。解体後、新たに建物を建てる予定がない場合は、解体業者を探し出すのが難しく、比較検討ができないという問題もあります。

「くらそうね」は、物件の場所や規模、構造(木造、鉄骨、鉄筋コンクリート)などの情報を基に、人工知能(AI)でその工事を得意とする業者を選び出し、利用者に複数の選択肢を提示します。戸建て木造住宅(30坪)の場合、およそ200万円かかるとされる解体費を150万円程度に抑えることができます。20年4月のサービス開始以来、延べ約3万件のユーザー登録がありました。ほとんどが個人で、半分以上が「空き家を処分したい人」です。

 解体業者の側にも、直接契約によって利益率を高められるというメリットがあります。国内には6万社の解体工事業登録があり、1万~1万5000社が実際に稼働しているとされます。「くらそうね」には、全国約1400社の解体業者が登録。当社が与信調査会社などを通じ、許可事業者であるかどうか、反社会的勢力でないかどうか、経営状態に問題はないか──といった点を定期的に確認しています。

「ジレンマ」が起業の源に

 大学卒業後、大手ハウスメーカーに就職しました。注文住宅の営業マンとして勤務し、下請けが出してきた解体費の見積もりに、自社の利益をのせた金額を顧客に提示していました。「解体費用がもっと安ければ、その分、新しい住まいにお金がかけられるのに」と言われ、ジレンマを抱えていました。

 学生時代から起業に関心があり、解体業者を探しやすくするサービスは需要があると直感しました。ニーズを調べ、11年に起業。最初はひたすら解体業者を訪ねて登録をお願いしました。施主からはウェブサイトで申し込みを受け付け、しばらくはメールや電話で業者を紹介していました。

 事業を進めるうちに、建て替え時の解体以上に空き家の解体のニーズが高いことに気付きました。多くの人にサービスを使ってほしいと考え、19年にパソコンとスマホ向けのマッチングシステムの開発に着手し、稼働にこぎ着けました。

 建物の「終わり」を考えずに新築住宅を増やし続けてきたツケが、空き家問題です。住まいの循環を見直す転換点を作り出すのが、大きな目標です。


企業概要

事業内容:住関連工事・住関連製品の仲介、情報提供

本社所在地:名古屋市中村区

設立:2011年4月

資本金:9億5300万円(資本準備金含む)

従業員数:60人


 ■人物略歴

かわぐち・てっぺい

 1983年愛知県生まれ。2005年京都大学農学部卒業後、セキスイハイム中部に入社し、住宅営業として6年間勤務。11年3月に退職、翌4月にクラッソーネを創業。38歳。

インタビュー

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

8月23日号(8月16日発売)

電力危機に勝つ企業12 原発、自由化、再エネの死角 オイルショックを思い出せ ■荒木 涼子/和田 肇15 電力逼迫を乗り越える 脱炭素化が促す経済成長 ■編集部16 風力 陸上は建て替え増える 洋上は落札基準を修正 ■土守 豪18 太陽光 注目のPPAモデル 再エネは新ビジネス時代へ ■本橋 恵一2 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事