蓮田健一 hacomono代表 ジム業界の手続きを一変
フィットネスジム業界やスクール業界といえば、対面の手続きが付きもの。だが、そうした手続きが今後、一変するかもしれない。
(聞き手=藤枝克治・本誌編集長、構成=白鳥達哉・編集部)
会員の入会手続きやレッスンの予約、月謝の支払い──。フィットネスジム業界や、ダンス、ゴルフなどのスクール業界では、利用者が諸手続きで店舗に出向かなければならず、とても面倒です。当社は、こうした手続きをパソコンやスマホで完結できるサービス「hacomono(ハコモノ)」を提供しています。(挑戦者2021)
フィットネスジムのようなサービス業界では、入会処理のような事務的な業務で、申込用紙に個人情報を書いてもらい、スタッフが個人情報を顧客管理システムに手打ちで入力しているところが少なくありません。レッスンの予約なども同様で、システム投資負担の重さがデジタル化の遅れの理由です。
ハコモノを使えば、利用者が簡単な操作で入会の手続きができるほか、レッスンの予約も、スマホの画面に表示されるレッスン内容から参加したいものを選ぶだけ。月々の月謝の支払いもクレジットカードの情報を登録すれば、毎月自動で引き落としができます。
また、店舗側にとっても、入力した個人情報、予約状況をすぐに把握でき、顧客管理の手間を減らせます。売り上げや利用状況についてもデータ集計できるので、マーケティングや各種分析に生かすことが可能です。
ジムの入退館についても、これまでは会員証を発行して対面で確認したり、24時間経営のジムでもカードキーを使うなどが一般的でした。ハコモノでは、スマホに発行されるQRコードを会員証や鍵の代わりに使えるため、24時間、非対面で自由に出入りできます。
これまで大和ハウス工業グループの「スポーツクラブNAS」や、ルネサンスのオンラインフィットネスサービス「ルネサンスオンライン」など、約300店舗で導入されています。価格は初期費用が20万円から、月額料金が3万5000円から。対面接触を避けられるため、新型コロナウイルス禍でのサービス提供にも適しています。
「世界一のプロダクト」目標
大学卒業後はIT企業に就職し、プログラマーとしてさまざまな手続きを電子化するワークフロー製品を開発。「世界一のプロダクト(製品)を作る」ことが目標でした。しかし、父の経営する電気工事会社が傾いたため、父の会社を手伝うことにしました。母が同じ会社で看護事業をしていたこともあり、ITを活用して効率的に送迎できる配車システムなども開発しました。
何とか倒産の危機は乗り越え、また世界一のプロダクトを作ることに挑戦するため、今の会社を創業しました。父の会社を手伝いながら、さまざまな企業のシステム開発も手がける中で舞い込んできたのは、あるエステ会社がフィットネス事業を立ち上げる話。海外のフィットネス企業を見ると、オンライン化がかなり進んでおり、日本で確実に需要があると感じたのが今の事業を始めるきっかけです。
今後は、エステやコワーキングスペースなどの業界へも事業を開拓していきます。また、自社でデータを蓄積する仕組みも作りたいですね。フィットネス業界では、年齢、住所などの個人情報が充実しており、データの販売やマーケティング情報の提供などにつなげたいと考えています。
企業概要
事業内容:フィットネスジム、スクールなど月謝製店舗のための予約・決済・会員管理システム「hacomono」の開発・提供
本社所在地:東京都豊島区
設立:2013年7月
資本金:1億300万円(資本準備金含む)
従業員数:26人(2021年3月現在)
■人物略歴
はすだ・けんいち
1976年東京都生まれ。2000年青山学院大学経営学部卒業後、ソフトクリエイト(現ソフトクリエイトホールディングス)に入社し、業務効率化ワークフロー製品の開発に従事。2011年の東日本大震災後、両親の会社経営の立て直しなどを経て、13年に「まちいろ」(現hacomono)を設立。44歳。