岡部大地 ジャパンヘルスケアCEO インソールで100年歩ける足に
足のトラブルは、体中の不調につながる。ジャパンヘルスケアでは、靴の中に敷くことで骨格を矯正できるインソールの普及を目指し、手軽に作成できる仕組みを整えた。
(聞き手=藤枝克治・本誌編集長、構成=市川明代・編集部)
足の骨格を整えるインソール(靴の中敷き)「HOCOH」(ホコウ)の開発・販売をしています。スマートフォンなどで足の写真を撮影してメールやLINEで送信することで、自分の足に合ったオーダーメードのインソールを作ることができます。(挑戦者2021)
足は片側だけで28個の骨からできています。魚の目も外反母趾(ぼし)も、足の骨組みが崩れることによるトラブルです。かかとの骨は中心より外側にあり、内側のやわらかい部分で衝撃を和らげる構造をしているため、内側に傾きやすくなっています。加齢などで傾きが大きくなり、体全体がゆがんで足の痛みや腰痛、肩こりを引き起こします。
骨格矯正インソールは、かかとの骨を正しい位置に戻すことで、体のバランスを整え、痛みや不調を和らげます。HOCOHは3層構造で、外側の硬い樹脂素材が、骨格を整える役割を果たします。中間はクッション性のあるウレタン。足に当たる部分は和紙で、蒸れない、におわないのが特徴です。
注文者には、足の写真を複数の角度から計6枚撮影して送ってもらいます。それを私たち足の専門医が目視でチェックして必要なデータを入力し、外部業者に型を作成してもらった後、町工場に委託してインソールを作っています。
将来には自動作成も
進学した三重大学医学部時代、実習で訪れた透析センターで、ひたすら透析治療を受け続ける糖尿病患者を目にし、病を未然に防ぐ予防医療に携わりたいと考えるようになりました。千葉大大学院で先進予防医学を学び、運動療法などで腰や手脚を治療する整形内科に進みました。自分自身がO脚の扁平(へんぺい)足で、足に問題を抱えていたことから、「足病」の治療や予防に関心を持ちました。
足を専門とする足病医は、日本ではまだなじみがありませんが、米国などでは一般的な職業です。足病の治療や予防で最初に考えたのは、歩き方の指導でした。多くの人に足のケアに関心を持ってほしいと2017年に起業し、センサーの前を歩いてもらうことで姿勢や腕の振り方、足の運び方などを解析し、歩き方を指導するサービス「ミラーウオーク」を18年にスタートさせました。
ただ、投資家にはなかなか注目してもらえず、「指導」だけでは十分な効果が出ないと気付かされました。そこで着目したのがインソールです。骨格矯正インソールは通常、整骨院で処方され、義肢装具士が製作しますが、1足5万円(保険適用あり)で、一般には普及していません。私が使ってみて、足の痛みや歩き方が劇的に改善したため、手軽に使えるようにする価値があると確信したのです。
20年に販売を開始し、これまでに数百枚を販売しました。1足2万7280円(税込み)で、関東に5カ所ある提携整骨院を通じた販売が中心です。現在、注文者にスマートフォンで足の周りをぐるりと十数枚の写真を撮影してもらうと、型の自動作成に必要な3Dデータが集められる新しいアプリを準備しています。これによって、将来的には価格も抑えられ、より多くの人に使ってもらうことができると考えています。100歳まで自力で歩ける社会を目指します。
企業概要
事業内容:足の健康診断、オーダーメードインソール、歩行解析システムの開発提供
本社所在地:東京都渋谷区
設立:2017年6月
資本金:2700万円(資本準備金含む)
従業員数:11人
■人物略歴
おかべ・だいち
1986年奈良県生まれ。三重大学医学部卒業、千葉大学大学院で医学博士取得。2017年ジャパンヘルスケア設立。18年から日本で唯一、足病専門の診療部門を持つ下北沢病院(東京都世田谷区)で足病医として勤務する。34歳。