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テクノロジー挑戦者2021

阿部吉倫 ユビー共同代表 AⅠ問診で患者に向き合う医療を

撮影 武市公孝
撮影 武市公孝

 カルテ書きなどの事務作業から医師を解放し、患者に向き合える医療を──。人工知能(AI)を使って症状に応じた問診をあらかじめ行う「AI問診」のサービスで、遅れていた日本の医療サービスの効率化を進める。

(聞き手・構成=岡田英・編集部)

 多くの医師は日々、電子カルテの入力などの事務作業に追われ、長時間労働になっています。私も研修医として救急外来にいた頃、問診しながらパソコンで電子カルテを書かないと回らないほどでした。ある時、患者に「こっちを向いて話を聞いてください」と言われたんです。患者と向き合うよりも、膨大な事務作業に時間を取られるのはおかしくないか──。こんな状況は変えなければと始めたのが「AI問診ユビー」です。(挑戦者2021)

症状がある部位を選択する画面
症状がある部位を選択する画面

 患者は診察前に、タブレット端末やスマートフォンで症状や発症時期といった20ほどの質問に回答します。質問は、5万本以上の医学論文を学習したAIが、約3500種類の質問を患者の症状に応じて出し分けるので、医師が診察室で聞きたい内容になっています。

 回答は、医師の端末に送られ、電子カルテにそのまま記載できるよう医療用語に翻訳されて表示されます。例えば、「生活に支障をきたす痛み」ならば「NRS8/10程度」といった具合です。回答内容から、関連の高そうな参考病名もリストアップされ、医師が「辞書」として使うこともできます。実際、頭痛はあるが歩いて来院した患者をAI問診した結果、「くも膜下出血」の可能性が表示され、念のためCT検査したら、実際にそうだったという事例もありました。

 従来の紙の問診票は質問が画一的で、医師が改めて問診して内容を電子カルテに記入していました。ユビーを導入した病院では、外来の平均問診時間が10.3分から3.5分に短縮されました。導入費用は20床以上の病院で医師の端末5台までの場合、年105万円(税別)。24年4月に医師にも残業規制が適用されるのを前に、地域の中核病院を中心に導入が増え、41都道府県の200以上の医療機関で使われています。

コロナ禍で導入加速

 AIによる自動問診や病気の推測は、高校の同級生だった久保恒太共同代表が東京大学大学院在学時に研究を始めたテーマでした。よく酒を飲むほど仲が良く、私も医学部時代から共同で研究するようになりました。

 起業を意識した一つのきっかけは、病院で働くようになり、事務作業のあまりの多さを目の当たりにしたからです。4年がかりで約5万本の論文からデータベースを構築し、AI問診のベースとなる質問選定のアルゴリズムを開発。17年5月にユビーを久保氏と共同創業しました。

 実際に東京都内のクリニックで導入してもらい、問診時間が3分の1に短縮されたのを踏まえて18年8月にAI問診ユビーのサービスを開始。当初は、高齢者には使いにくいという声もあり、カラオケの電子リモコンや銀行ATMを参考にして入力画面を改善。導入が少しずつ広がる中、病院での滞在時間を短縮して新型コロナウイルスの感染リスクを下げられることも導入を加速させました。

 20年4月からは、体調不良を感じた人がスマートフォンから適切な病院や診療科を探せる「AI受診相談ユビー」も始めました。今後は「AI問診ユビー」との連携を進め、双方の普及を進めていきたいです。


企業概要

事業内容:医療機関向けの業務効率化サービスと生活者向けの受診相談サービスの開発・運営

本社所在地:東京都中央区

設立:2017年5月

資本金:17億1550万円(資本準備金含まず)

従業員数:105人(パート・アルバイト含む)


 ■人物略歴

あべ・よしのり

 1990年生まれ。大阪府出身。2008年大阪府立大手前高校卒業。15年東京大学医学部医学科卒業。東大医学部付属病院、東京都健康長寿医療センターで初期研修を修了。医師。高校時代の友人の久保恒太氏と17年5月にユビーを設立。30歳。

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