経済・企業挑戦者2021

黒崎賢一 BEARTAIL代表 紙の請求書にさようなら

撮影 武市公孝
撮影 武市公孝

 紙の請求書の精算処理がコロナ禍の業務課題になっている──。「ITシステム」と「人力による代行作業」を掛け合わせた請求書業務システムを提供し、すべての作業をオンライン化する。

(聞き手・構成=白鳥達哉・編集部)

 請求書の受け取りからデジタル化、保管に至るまで、面倒な業務をすべて代行するサービス、「インボイスポスト」を開発・提供しています。(挑戦者2021)

 コロナ禍でリモート化が進み、在宅勤務も珍しくなくなりました。ここで大きな課題になっているのが、請求書の処理業務です。

 デジタル化が進む現在でも、紙の請求書が会社に送られてくることは珍しくありません。その場合、経理担当は請求書の確認のためだけに会社に出社する必要があります。また、出社していない個別の担当者宛てに請求書が届くこともあり、長い間、机に放置されたあげく、紛失や申請漏れにつながるケースも発生しています。

 インボイスポストでは、紙やメールなど、さまざまな形式で送られてくる請求書の受け取り先をすべて当社に変更してもらいます。担当者は出社の必要がなくなり、受領漏れも出なくなります。変更の手続きは、すべてこちらで代行するので手間もかかりません。

 受領後の請求書は、外部委託している2000人のオペレーターの手作業による入力で、PDFファイルにデータ化して仕分けします。さらにそれぞれの会社の会計システムに合った形でデータをダウンロードでき、承認や経理の作業もすべてオンライン上で完結できるようになります。

 また、意外にコストがかかるのが紙原本の保管です。原本は当社の倉庫で10年間保管するので完全なペーパーレス化が実現できます。また、監査・税務調査などで原本が必要な場合は、いつでも返却・再保管が可能です。

支出のコンシェルジュ業にも着手

 起業については、実は強い思いがあったわけではありません。きっかけは、大学生のころに始めた、価格比較から購入までを自動で行ってくれるEC(電子商取引)サイトの購入代行サービスで、個人名の運営だとサービスの信頼性に欠けるので会社を作ったというだけの理由でした。

 このサービスは、利用者も少なく1年足らずで廃業。めげずに今度はレシートを撮影するだけで家計簿が作れる「ドクターウォレット」というアプリを開発しました。このアプリは今も提供を続けており、150万人のユーザーに利用されています。

撮影してポストに捨てるだけで経費精算ができる「レシートポスト」も展開する
撮影してポストに捨てるだけで経費精算ができる「レシートポスト」も展開する

 その後、2016年に電子帳簿保存法の改正があり、スマホで撮影した領収書のデータでも経費精算ができるようになりました。そこで開発したのが「レシートポスト」。レシートを撮影して専用ポストに入れるだけで、経費精算ができるサービスで、この仕組みを請求書用に応用したのがインボイスポストです。

 レシートポストは、日本テレビホールディングスや日東工業、商船三井システムズなど500社以上が導入していますが、インボイスポストはまだ少ないので、今年の前半はインボイスポストの営業に注力します。今年の後半には、これまで蓄積してきた経費精算のデータを使って、特に法人に対して、オフィス用品などをより安く購入できる方法をアドバイスする、支出コンシェルジュサービスを始めることも検討しています。


企業概要

事業内容:経費精算・請求書ペーパーレス化サービス、家計簿アプリの開発・運営

本社所在地:東京都千代田区

設立:2012年6月

資本金:1億円(資本準備金含む)

従業員数:66人(2020年8月現在)


 ■人物略歴

くろさき・けんいち

 1991年東京都生まれ。高校在学中からネットランナーやCNET JapanなどのIT系メディアでテクニカルライターとして活動。筑波大学情報学群情報メディア創成学類に進学後、大学在学中の2012年にBEARTAILを設立。29歳。

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