経済・企業挑戦者2021

中川英之 オスミック社長 ミニトマトで企業参入支援

    撮影 武市公孝
    撮影 武市公孝

     日本の農業のためにも企業の参入を促そうと始めた高糖度ミニトマト栽培・販売が、大きな「実り」をもたらしそうだ。

    (聞き手=藤枝克治・本誌編集長、構成=中園敦二・編集部)

    独自のノウハウで生産する高糖度ミニトマトの栽培ハウス OSMIC提供
    独自のノウハウで生産する高糖度ミニトマトの栽培ハウス OSMIC提供

     企業の農業参入が最近増えていますが、参入後すぐに撤退か、続けていても赤字垂れ流しのような場合があります。マネジメント能力も人材もお金もある企業が、普通の農家さんに負けるという現実があるんです。そこで、OSMIC(オスミック)独自の有機培土と栽培設備のノウハウを生かして、農業未経験の企業に高糖度ミニトマトを通年出荷してもらおうと考えています。(挑戦者2021)

     培土は病害に強い作物を作ろうと、副社長と島根大学が共同研究したものです。菌体、有機資材などを入れて発酵させ、10カ月かけて作ります。“秘伝の調合”で、副社長と工場長しか知りません。これで栽培すると甘みが増すんですよ。通年栽培するのに大切なことは、温度コントロール。夏場のハウス内は40度を超えるので、30度以下に抑えられる設計にして環境制御システムを導入しています。

     現在、契約企業は6社。農地探しから資材提供、栽培・人材教育を指導し、そして収穫物の買い取りまでしています。収穫量は年400~500トンで、来年には1000トンを超えそうです。

     買い取ったミニトマトは一粒一粒糖度を測って選別。糖度別に3段階に分けて、スーパーや百貨店、ネット通販にて販売しています。1パック(120グラム)500~700円(自社通販定価)と通常の3~5倍の価格でも売れています。昨年、さらに上のクラス(OSMIC first)を450グラム・5000円で販売したら、3000セットがほぼ完売でした。この価格で購入できる「日本一のミニトマト」ということで、贈答品にちょうどいい値でした。

     年間を通して定価販売ですので時期によって売れ残りそうだったり、収穫量が多くなったりすることもあり、冷凍保存して加工品にします。例えば、ジュースで、最高額は1本(720ミリリットル)1万円です。ブランド確立にも役立ちます。生鮮で価格を維持したいと思ったら、ブランドを常に引っ張り上げないといけないんですよ。

     ミニトマトを選んだのは、スーパーの売り場が充実していて同じようなミニトマトでも値段が違います。おいしいということで異なる値段がつき、消費者もそれを受け入れている数少ない商品です。うちのミニトマトは高いけれどもおいしいという価値を価格に反映できるかが勝負です。今後は、大玉トマトやミニパプリカなど取り扱いを増やしたい。イチゴは通年栽培に成功したので、夏にイチゴ狩りができるという付加価値で売っていこうと思っています。

    増資も計画

     日本の農業は、大規模に展開する主体が現れないとダメになると思っています。農家さんは子供に継がせたくない、子供もやりたくないという状況です。だったら企業がやらざるを得ない。資本力がある大企業が、すぐにもうからなくても、日本の将来のために役に立つのではないか、というくらいの思いでスタートしてほしいです。

     今後の事業拡大をにらんで、後ろ盾となってくれるような親会社が見つかればいいなと思いながら、増資も計画しています。


    企業概要

    事業内容:農業ビジネス及び事業展開のコンサルティング、農産物の販売、プロモーション

    本社所在地:東京都中央区

    設立:2015年5月

    資本金:9990万円(資本準備金2億5505万円)

    従業員数:63人


     ■人物略歴

    なかがわ・ひでゆき

     1971年生まれ。東京都出身。都立国立高校卒業後、99年山田&パートナーズ会計事務所(現税理士法人山田&パートナーズ)入所。公認会計士として監査・コンサルティング業務に従事しながら、2015年にオーガニックソイル(現OSMIC)を設立。49歳。

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