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経済・企業 挑戦者2021

加茂倫明 POL代表取締役CEO 理系人材を最大限に生かす

撮影 武市公孝
撮影 武市公孝

 旧来の就活手法に飽き足らない優秀な理系学生と企業をダイレクトにつなぐサービスを展開している。

(聞き手=藤枝克治・本誌編集長、構成=市川明代・編集部)

 理系の学生は、研究室に割り当てられる推薦枠や紹介によって、大手メーカーなどに就職するのが一般的でした。ただ、ベンチャー企業や外資系IT企業など、理系人材の活躍の場が広がる中で、従来の就活システムでは飽き足らない学生が増えています。(挑戦者2021)

 当社の「LabBase(ラボベース)」は、理系人材に特化した就職支援サービスです。データベース上に研究内容やスキルなどを詳しく書き込むことで、企業の目にとまり、直接スカウトを受けることができます。推薦や紹介と違って、「断りにくい」というしがらみもありません。何より、研究や論文の執筆に忙しい学生たちにとって、効率的に就活を進められるのがメリットです。

 現在の学生登録は3万人。そのうち9割が大学院修士課程の学生です。理系の修士は1学年5万人程度なので、市場シェアの3割を握っていることになります。

 一方、企業はイノベーションを起こせる人材を欲しています。例えば自動車業界では、自動運転や電動化などの技術革新を求められ、機械工学系を中心とした採用を見直しています。トヨタ自動車も「優秀なAI人材がほしい」という理由で、ラボベースを利用しています。企業は年間120万〜1500万円(一部コンサルティング料含む)の利用料を支払うことで、検索システムを使ってデータベースに登録されている全学生にアクセスできます。導入企業は累計300社に上ります。

研究室を訪ねて学生集め

 高校生のころから、いつか起業して、社会の役に立ちたいと考えていました。2014年に東京大学理科2類に入学し、ベンチャー企業3社でインターンを経験しました。理系人材の就活支援事業に行き着いたのは、大学の先輩の「研究が忙しくて就活をする暇がない。推薦でいいかな」という一言がきっかけでした。

 大学在学中の16年9月、起業家と投資家のマッチングイベントで出会った中古車販売ガリバーインターナショナル(現IDOM)の元取締役と共同でPOL(ポル)を創業。17年2月のサービス開始に向け、ウェブサイトを作って「事前登録企業募集中」と発信すると、1週間で120社から問い合わせがありました。「東大生を中心に理系学生を300人集めます」とうたって営業をかけました。

 同時に、月に1000件ペースで主要大学の研究室に足を運び、目の前でプロフィルを書いてもらうという泥臭い方法で登録学生を増やしていきました。創業時に多くの学生を集められたことが、競合他社との差別化につながったのだと思います。

 20年6月には、研究職・技術職の第二新卒者向け転職サイト「ラボベースプラス」を開設しました。19年にサービスを開始した「ラボベースX」では、国内のさまざまな企業や機関に所属する研究者の研究内容をデータベース化し、産学連携や共同研究のパートナー探し、互いの情報共有に役立ててほしいと考えています(注:現在事業休止中)。

 僕たちの使命は、研究者の可能性を最大化し、科学の発展につなげること。いま担っている事業は、そのための第一歩なのです。


企業概要

事業内容:理系学生特化型の新卒採用サービス「LabBase」、研究開発者・技術者に特化した中途採用サービス「ラボベースプラス」など

本社所在地:東京都千代田区

設立:2016年9月

資本金:6億1313万円(資本準備金含む)

従業員数:56人(21年4月1日現在)


 ■人物略歴

かも・みちあき

 1994年京都府生まれ。東京大学工学部システム創成学科3年生(休学中)。在学中にベンチャー数社で長期インターンを経験し、2015年9月からシンガポールに渡って投資事業会社REAPRAグループのヘルスケア企業HealthBankで新規事業の立ち上げに関わる。2016年9月にPOLを設立。26歳。

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