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経済・企業挑戦者2021

永岡里菜 おてつたび代表取締役CEO 「お手伝い」で地域のファン増やす

撮影 武市公孝
撮影 武市公孝

 人手不足に悩む地方と旅行者を「お手伝い」を介してつなぐサービス「おてつたび」。あまり知られていない旅先に行き、地元の人との交流を深めるきっかけを生んでいる。

(聞き手=藤枝克治・本誌編集長、構成=岡田英・編集部)

利用者は「おてつたび」の募集一覧から「旅先」を選ぶ
利用者は「おてつたび」の募集一覧から「旅先」を選ぶ

 地方に行って「お手伝い」すると、旅費が安くなり、全国に第二、第三の故郷ができていく──。「お手伝い」と「旅」を掛け合わせた「おてつたび」は、収穫期の農家や観光シーズンの旅館といった短期的な人手不足で悩む地域の人と、いろんな地域に行ってみたい利用者をつなぐウェブ上のマッチングサービスです。(挑戦者2021)

 募集する側はまず、お手伝いの内容や食事提供の有無などを専用サイトに登録。利用者はそれを見て希望先に申し込みます。現地に行くまでの交通費は利用者が負担しますが、お手伝いした分の報酬が支払われ、基本的には旅館や農家、寮、自治体の施設などに無料で泊めてもらえます。旅費を抑えられ、働きながら地域の人と触れ合えます。我々は募集する側から仲介費用を受け取ります。

 お手伝いの中身はさまざまです。例えば、農家ならイチゴやブドウといった農作物の収穫作業、草刈り、ビニールハウスの立ち上げなど、旅館なら掃除や食器洗いなど。定員を超える申し込みが殺到する案件も多いです。2008年の岩手・宮城内陸地震、11年の東日本大震災で長期休業を余儀なくされた宮城県栗原市の老舗温泉旅館が今年4月の宿泊業再開に向けた準備の手伝いを募った案件には、募集から数時間で定員の3倍くらいの申し込みがありました。

 利用者の半数は大学生ですが、最近は社会人の申し込みも増えています。

「どこだそこ?」の魅力

 私自身、三重県尾鷲(おわせ)市という「どこだそこ?」と言われがちな、漁業と林業の町の出身です。実際、大学進学で関東に出て来た時も、誰も尾鷲のことを知らなかった。そんな現実に、最初はあきらめの気持ちもありましたが、違和感も残りました。

 もともと小学校の先生になりたいと思って大学は教育学部に進んだのですが、まず3年は社会経験を積もうと卒業後は民間企業に就職。和食の普及事業を手掛けるベンチャー企業で、全国各地を飛び回る中で、尾鷲のような「どこだそこ?」と言われがちだけど行ってみたら「なんだここ!」と驚く魅力的な地域がたくさんあることに気付いたんです。そんな地域に人が訪れる仕組みを作りたいと思い、会社を辞めてまずは独立しました。

 といっても、事業計画があったわけでもなく、まずは東京で借りていた部屋を解約して半年間、ひたすら夜行バスで地方を巡りました。その中で「人手不足だから手伝って」と言われることが多く、都心の知り合いなどをボランティアとして紹介するところから試験的に始めました。試行錯誤する中で、知らない地域に行く際に旅費がハードルの一つになっているのに気付き、ボランティアでも単なるアルバイトでもない「お手伝い」で旅費を抑え、そのハードルを下げる仕組みを思いつきました。18年7月に起業し、19年1月からサービスを始めました。

 利用者の約6割は、現地を再訪したり、その地域の物産を買ったりと地域との関係を続けています。親戚のようにお互いを思いやる「お手伝い」をきっかけに、各地域の「ファン」を全国に増やしていきたいです。


企業概要

事業内容:人手不足の地域と旅行者をマッチングするサイトの運営

本社所在地:東京都渋谷区

設立:2018年7月

資本金:非公開

従業員数:30人(パート・アルバイトなど含む、3月1日現在)


 ■人物略歴

ながおか・りな

 1990年生まれ。三重県尾鷲市出身。2013年千葉大学教育学部卒業。東京のイベント企画・制作会社や、学校給食の和食化などに取り組むベンチャー企業をへて、18年7月に「おてつたび」を設立。30歳。

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