経済・企業

コンビニ拡大路線頭打ち、人手不足、コスト対策に無人決済の導入急ぐ=鈴木淳也

    「ファミマ‼サピアタワー/S店」の様子 筆者撮影
    「ファミマ‼サピアタワー/S店」の様子 筆者撮影

    30 3月31日、ファミリーマートとタッチトゥーゴー(TTG)が共同開発した無人決済システムを採用した初の実用化店舗「ファミマ!!サピアタワー/S店(ファミマTTG)」が東京駅横のサピアタワー内にオープンした。

     買い物客が手に取った商品を店内のカメラやAI技術によって自動的に認識、最後にセルフ会計レジで支払いを行えば一切の対人接客なく買い物ができる仕組みだ。米国では「アマゾンGO」の名称で同様のサービスがすでに3年前から実用化されており、日本のコンビニ大手では初の導入となる。

     TTGはJR東日本のスタートアップ事業として独立したもので、昨年には同様の店舗を高輪ゲートウェイ駅内にオープンしている。今回は商品の品ぞろえをファミリーマートに準拠のものとし、レジでの会計手段はクレジットカードと交通系電子マネーに加え、高輪ゲートウェイの店舗では対応していなかった現金利用を可能にした。これは、「キャッシュレス比率は現状で3割程度」という事情に合わせてのことだ。

     新店舗開店に際して、ファミリーマートの細見研介社長は、「コロナ禍において非接触・非対面ニーズが高まるなか、従業員の安全性向上と人手不足の問題解決、同時に加盟店の運営コスト削減につながる取り組みになる」と、その導入効果に期待を寄せる。

    コロナ後に深刻な人手不足

    野村総研は夜間の店舗を自動化するAIロボットを提案している 筆者撮影
    野村総研は夜間の店舗を自動化するAIロボットを提案している 筆者撮影

     ファミリーマートが無人決済店舗の導入に踏み切った背景には、「拡大路線の頭打ち、人手不足、運営コスト負担」というコンビニ業界の三つの大きな課題がある。

     かねてよりコンビニ業界では人手不足が深刻化、採用が年々厳しくなっており、外国人労働者でカバーする店舗も少なくない。

     新型コロナウイルスの影響で休業者や失業者が増えたことで、雇用状況が改善するかとも思われた。しかし、野村総合研究所の廣戸健一郎氏は、「感染が小康状態に入った20年末には、コロナ禍前の厳しい採用状況に戻ってしまっている。これが意味するのは、生産年齢人口が毎年50万人近く減少している日本において、労働市場が回復に向かった後に深刻な人手不足が顕在化することだ」と警告する。

     また、新規店舗を出店して売り上げを伸ばすという従来の拡大戦略も限界が見えている。少ない人員による省力化、そして低コストで運営できる無人決済店舗の導入は、それらの課題を抱える業界にとって、まさに解決策なのだ。

     無人決済店舗は商圏の問題も解決する。前述のようにコンビニの拡大戦略は曲がり角にきており、今後は新規出店を行おうとしても採算割れしてしまったり、既存店の売り上げを食い合う結果につながりかねない。そこに無人決済の技術を活用できるようになれば、これまでは出店が難しかったビルなど施設内や小規模な立地においても店舗運営が可能となる。高輪ゲートウェイの店舗のケースでは、日商30万~50万円程度が損益分岐点で、都市部であれば、この程度の売り上げを確保できる場所は増加するだろう。

     ドラッグストア、コンビニ、スーパーまで、人員配置を最小限にしつつ、深夜販売で売り上げを積み増しできるならば、こうした頭打ち問題の一端は解決できる。

     他のコンビニ大手やそれ以外の企業も、今年に入って無人決済店舗や、セルフレジの増加で、課題に対応しようという動きが目立つようになってきた。

     たとえば、セブン─イレブン・ジャパンはNECと技術提携し、顔認証で入店と決済が可能な無人店舗をNECの三田事業所内に設置、実証実験を開始した。

     ローソンも富士通、レジ無し店舗のシステム提供を行う米ブイコグニションテクノロジーズ(ジッピン)と共同で、無人決済技術を採用した実験店舗を富士通の新川崎事業所内に昨年2月に設置している。また、ローソンは時間帯に応じてセルフモードに切り替え可能なレジを全店舗に導入したほか、現金利用が可能なセルフレジの導入や、スマホで商品バーコードを読んでセルフ決済可能なスマホレジ対応店舗も2月末時点で114店舗と順次拡大を進めている。

     イオン傘下のダイエーは、中国クラウドピック社の技術を用いた小規模実験店舗を今夏オープン予定と報道されている。ダイエーの広報担当者は「現時点で決定事項はない」と話すが、通常のコンビニよりもさらに小規模な店舗運営に興味を持っていることは否定していない。なお、クラウドピックは中国本土をはじめ世界で複数の無人決済店舗を運営しており、19年にNTTデータとの技術提携を発表、昨年末には日本法人を設立し市場開拓に乗り出している。

     また、野村総研は人手不足解決の一手として、顧客がオーダーした商品をロボットが店舗内でピックアップし、店頭の受け渡しボックスで決済をするというAIロボットを提案している。同社のAIソリューション開発部は、実際のロボットを流通業向けITシステム総合展「リテールテックJAPAN」に出展しており、夜間など人手をかけられない時間帯の店舗用に、2~3年後の実用化を目指すという。

    完全無人化に規制の壁

     こうなると、ゆくゆくは店舗に店員を1人も置かない“完全無人化”にも期待ができそうだが、実現には規制という大きな壁が立ちはだかる。

     ファミマTTGでは最低1人の店員が裏で待機しており、商品搬入のほか、店内監視や問題発生時の顧客対応にあたっている。24時間運営において売り上げの柱となる酒類の販売も、年齢確認が必須だ。年齢確認は完全対面以外に、カメラ越しでも認められているのだが、これも画像認識などの技術でなく、人間による確認が必要になっている。

     同様に、弁当販売における有人化、タバコ販売のタスポ対応、高単価商品取り扱いリスクなども課題として挙げられ、適用可能な業態も限られるのが現状だ。

     コロナ禍が落ち着き始める来年以降、各社の取り組みは、噴出する人手不足や商圏拡大の頭打ち問題にどれだけの効果があるのか、成果は間もなく明らかになる。

    (鈴木淳也・ITジャーナリスト)

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