経済・企業注目の特集

1~3月期GDPがマイナス 20年度は「リーマン」超える落ち込み ワクチン遅れで4~6月も停滞=星野卓也

 内閣府が5月18日に公表した日本の2021年1~3月期の実質GDP(国内総生産)速報値は、年率換算で前期比マイナス5・1%と、3期ぶりのマイナス成長となった。また、20年度の実質GDPはマイナス4・6%と、リーマン・ショックが起きた08年を超える落ち込みとなっている。

 日本経済は、最初の緊急事態宣言が発令された20年4~6月期に同マイナス28・6%の記録的な落ち込みの後、7~9月期、10~12月期は持ち直しが続いていたが、今回再びマイナス成長に転落した。

 主因は、個人消費の減少(前期比マイナス1・4%)である。年明けに2度目の緊急事態宣言が発令され、外食を中心にサービス消費が減少したことが背景だ。海外需要は7~9月期、10~12月期の景気回復をけん引してきたが、今期は自動車関連を中心に輸出の回復ペースが鈍化する一方、輸入の増加が続いたことでマイナス寄与となった。公的需要もマイナスで、GoToトラベル事業が休止に追い込まれたことなどから政府消費が減少している。

2期連続マイナスか

 4~6月期も厳しい情勢にある。当初ゴールデンウイーク期間に限る予定だった3度目の緊急事態宣言は、感染者数の収束がみられず、5月末までの延長が決まった。執筆時点における新規感染者数は、依然高い水準にあり、むしろ宣言対象地域の拡大がみられるようになっている。5月末に予定通り宣言が解除されるかどうかも不透明だ。

 期待できる点を挙げると、設備投資や輸出の底堅さが続くとみられる点だ。設備投資の先行指標である機械受注統計も改善しているほか、製造業部門主体で海外経済が持ち直しており、輸出の追い風となることが予想される。半導体不足が生産活動に及ぼす負の影響は懸念材料だが、需要の底堅さが先行きの景気を下支えするだろう。

 ただし、それでも緊急事態宣言のマイナス影響を打ち消すには至らないと考えられる。4~6月期もサービス消費の低迷が続く公算が大きく、景気は停滞が続くと見込まれる。2期連続のマイナス成長となる可能性も捨てきれない。

 また、4~6月期は、各国のワクチン接種の進捗(しんちょく)度合いの差が、経済回復の差となってより鮮明に表れることになる。

 米国ではワクチン接種の広がりやバイデン大統領の大規模経済政策が支えとなり、景気は足元でも急ピッチでの回復が続いている。ユーロ圏は1~3月期こそマイナス成長となったが、4月のPMI(購買担当者景気指数)が、製造業・サービス業において基準値の50を上回り、経済活動の拡大を示唆している。

 欧米が「ポスト・コロナ」への足取りを確かなものにしていく一方、日本はワクチン接種の遅れとともに経済面でも出遅れが鮮明になるだろう。それは4~6月期のGDP統計において経済成長率の差となって如実に表れる可能性が高く、「K字回復」の様相が強まると思われる。

(星野卓也・第一生命経済研究所主任エコノミスト)

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