人工中絶に臨む少女の孤独――ベルリン国際映画祭グランプリ作が公開=野島孝一
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映画 17歳の瞳に映る世界 思わぬ妊娠に戸惑う少女 米国の現実が胸に迫る=野島孝一
第70回ベルリン国際映画祭銀熊賞(審査員グランプリ)や、サンダンス映画祭2020ネオリアリズム賞を受賞した。世界各地の国際映画祭で上映され、注目を集めたみずみずしい作品だ。
米ペンシルベニア州に住む17歳のオータム(シドニー・フラニガン)は孤独で愛想がない少女。高校に通い、地元のスーパーで、いとこのスカイラー(タリア・ライダー)とレジ打ちのバイトをしている。そんなオータムは自分が妊娠しているのを知る。当地では中絶手術には親の承諾が必要となる。親には打ち明けられないオータムは、スカイラーに付いてきてもらい、長距離バスでニューヨークへ向かう。こっそりと中絶手術を受けるために──。
たいした筋書きがあるわけではない。ただ、じっと2人の少女を見つめるだけ。だから無理やりに作り上げたドラマという感じがしない。まるでドキュメンタリー映画を見ているようだ。撮影のエレーヌ・ルヴァールは、アニエス・ヴァルダ監督やヴィム・ヴェンダース監督のドキュメンタリー映画で力を発揮してきた。リアルな描写は得意だから臨場感が観客の胸を揺さぶる。自分でも思わぬことに巻き込まれた少女たちの戸惑いが、実感を…
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週刊エコノミスト
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