教養・歴史書評

ついに『セブンティーン』も不定期刊に=永江朗

 集英社の女性誌『Seventeen(セブンティーン)』が10月号以降、年3~4冊発行の不定期刊となる。同社の広告主向けサイト「SHUEISHA ADNAVI」によると、〈8月ローンチ予定のウェブサイトと合わせ、専属モデルやタレント、読者、インフルエンサーなどがSNS、YouTube等を通じて発信する情報でつながる「双方向のコミュニケーションの場」を提供する新しいメディアの形に進化します〉とのこと。要するに媒体の軸を紙からデジタルに移行する。

 同誌の実売部数はABC公査によると7万2434部(2020年下期。デジタル版591部を含む)。10年同期は28万5184部(デジタル版はなし)。10年間で4分の1近くにまで実売部数が減った。

『セブンティーン』は1968年、週刊誌として創刊された。その後、88年に隔週刊化、2008年に月刊化し、そのつど表記も変えてきたが、対象とする読者層が10代後半の女性であることは変わらない。しかし、この半世紀あまり、読者のライフスタイルは大きく変わった。70年代から90年代の終わりごろまでは、女子高校生やちょっと背伸びした女子中学生が同誌を学校に持ち込んで、休み時間には同誌を囲んでアイドルやファッションの話で盛り上がった。彼女たちはインフルエンサーだった。また、書店の雑誌売り場では、同誌を立ち読みしながらおしゃべりする女子中高生の姿もよく見られた。ところがスマートフォンが普及してから、こうした光景は消えた。インフルエンサーはネットの中にいる。

 電通が毎年発表している「日本の広告費」によると、10年の雑誌の広告費は2733億円だったが、20年は1223億円と半減。一方、この10年でインターネットは7747億円から2兆2290億円へと、約3倍に伸びた。

 実売7万部あまり(発行部数は約12万5000部)という数字は、今どきの雑誌としては健闘しているほうだが、紙の月刊誌から「デジタルをメインとする新体制」(前出サイト)に変えるのも納得できる。もはや紙の雑誌は、魅力ある誌面をつくりさえすれば読者が戻ってくるというような状況にはない。


 この欄は「海外出版事情」と隔週で掲載します。

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