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週刊エコノミスト Online ゼロからはじめる資産形成

ゼロからはじめる資産形成④ NISAを賢く使おう!ケース別活用術

NISAを使わない手はない
NISAを使わない手はない

 投資の初心者にとって「使わない手はない」のは、NISA(ニーサ)です。NISAというのは「少額投資非課税制度」の愛称で、個人投資家を応援する税制優遇制度として、2014年にスタートしました。通常、運用によって得られた利益には約20%の税金がかかりますが、NISAの口座を使った運用であれば、一定期間は税金がかからないというメリットがあります。

 2016年には未成年者専用の「ジュニアNISA」、2018年には積み立て型限定の「つみたてNISA」が登場しました。2014年に始まった「一般NISA」と合わせて、現在三つのNISAがあります。2024年には、「一般NISA」が「新NISA」に生まれ変わることも決定しています。

 今回は「新NISA」の変更点も踏まえ、三つのNISAの概要と、ケース別のNISA活用術について解説します。

一般・ジュニア・つみたて 3つのNISA

 一般NISA、ジュニアNISA、つみたてNISAの三つのNISAは、非課税となる投資枠や、投資方法、投資対象などによって使い分けできるよう、制度設計されています。

 一般NISAとジュニアNISAに共通しているのは、投資対象と投資方法の選択肢が多い点です。投資対象の選択肢は、国内や海外の上場株式、投資信託、REIT(上場不動産投資信託)、ETF(上場投資信託)などと幅広く、積み立てに限らず、一度にまとめて投資することもできるのが特徴です。

 一方、つみたてNISAは、投資方法が積み立てに限定されています。投資対象も、国が定める低コストなどの基準をクリアした投資信託とETFに絞られています。作りがとてもシンプルで、比較的、投資経験のない人や、コツコツ積み立てで資産形成したい人にも利用しやすい制度です。

 それぞれ、年間の非課税投資枠や、非課税で投資できる期間が異なります。一覧表で確認してみましょう。

NISAは2024年からこう変わる

 ここで、既に決まっている今後の変更点についてお知らせしておきましょう。

 2028年末まで新規で投資できる一般NISAは、前述のように2024年から「新NISA」に生まれ変わります。また、つみたてNISAの新規の投資可能期間は2042年末までとなっています。

 子ども名義で開設するジュニアNISAは、2023年末に制度の廃止が決まっていて、新規で投資できるのはあと数年間ということになります。期間は限られますが、払い出しルールが変わり、使いやすくなるということで、始めることを検討しているひともいます。

 そもそも今のジュニアNISAは、3月31日時点で18歳となる年の前年の12月31日まで、払い出しができません。制度廃止に伴い、この払い出し制限が解除され、2024年以降いつでも非課税で払い出せるようになるのです。払い出し制限がネックとなって利用を見送っていた人には、再考のチャンスかもしれません。

 ちなみに、NISAは1人1口座しか持てません。一般NISAとつみたてNISAを、同じ年に一緒に使うことができないことに留意が必要です。変更は1年ごとに可能で、今年は一般NISA、来年はつみたてNISA、と使い分けができます。ただし、その都度、届け出が必要です。

ケース別、NISAはこう使おう

 では、家族構成が異なる三つのケースについて、NISAの活用方法を具体的にイメージしてみましょう。

 家族4人、夫36歳(会社員)、妻36歳(専業主婦)、子ども6歳、3歳の場合です。

 子育て世代の資産形成は、「教育資金」と「夫婦の老後資金」が2大テーマです。

 このケースでは、まとまった教育費が必要となる大学進学まで、上の子で12年、下の子で15年程度あります。また、夫婦の老後まで約30年の準備期間があります。

 この準備期間を有効に活用するための方法としておすすめしたいのが、長い期間、一定額で積み立てできるつみたてNISAです。

 たとえば、つみたてNISAで月2万円を家計から積み立てると、下の子の大学進学までの15年間に総額360万円になります。仮に年2%で運用できたとすると、360万円は約420万円(利益60万円)となります。預貯金等で用意した教育資金のプラスαとして準備できて安心ですね。

 通常であれば、投資で得られる60万円の利益には約20%の税金がかかり12万円程度が差し引かれますが、つみたてNISAは非課税なので、まるまる受け取ることが可能です。

2023年まではジュニアNISAも活用できる

 また、貯金が多くなくても、祖父母から教育資金をプレゼントしてもらえるなら、2023年末までジュニアNISAを活用するという手もあります。

 ジュニアNISAの年間の非課税投資枠80万円は、贈与税の基礎控除額110万円の範囲内に収まります。ジュニアNISA口座は2人の子どもそれぞれに使えるので、年間80万円×2口座=160万円までの利用が可能です。新規で投資できるのは2021年、2022年、2023年と3年間だけになりますが、最大480万円まで利用できます。

 2024年以降はいつでも非課税で払い出せるようになるため、運用の成果にもよりますが、うまく増えていれば、大学進学までのまとまった資金準備にもあてられます。

教育資金の準備が終わったら老後に向けてつみたてNISAを

 そして教育資金の準備が終わったら、今度は夫婦の老後のために「つみたてNISA」を活用します。

 つみたてNISAの新規投資は2042年末までなので、子どもの独立後の積み立て期間は実質5年程度になりますが、教育費がかからない分、積み立て原資をふやせます。

 さらに、夫だけでなく妻もNISA口座を持つことで、年間40万円×2口座=80万円までの投資枠が使え、5年間で夫婦合わせて400万円まで積み立てることができます。

 次に、おひとりさま、42歳女性(会社員)の場合です。

 おひとりさまの場合、老後の不安を払しょくするためにしっかり資産形成をしておきたいという思いはあるものの、資産を残す必要がないのだから自分が使って楽しむことも考えたい、というケースが多いのではないでしょうか。

 そういう場合は、老後の生活資金に必要となる額を目標に、つみたてNISAで毎月一定額を積み立てる計画と、一般NISAを活用して優待と配当を楽しむ株式投資の計画を、バランスよく取り入れると良いかもしれません。

 たとえば、お目当ての株式がある年は一般NISAを活用して株式投資をする。もし、株式投資だけでは一般NISAの年間120万円の投資枠を使い切らず、ほかに余裕資金があるのなら、投資信託の購入で残りの投資枠を有効活用することも可能です。

 目的に応じて制度を使い分ければ、老後のための積み立ても、愛用の化粧品会社やお気に入りの食品メーカーの株主になって優待を楽しむ株式投資も、両立できます。

 次に、夫50歳(会社員)、妻47歳(会社員)の夫婦二人の共働き世帯の場合です。

 夫は経済に詳しく、株式や為替など、世の中の動きに敏感。一方、妻はあまり経済のことに関心がなく、投資に対しても消極的。夫婦で投資に対する考え方が全く異なる、ということもあるでしょう。

 NISAは1人1口座のため、自分の考えや資産形成の目的に合わせて、夫婦それぞれ、適した制度を選ぶことが可能です。

 たとえば、米国株に興味があり、積極的に投資したい夫は、一般NISAで株式投資をする。株式そのものには興味はないけれど、将来のために少しでも積み立てをしたい妻は、つみたてNISAを使って積み立て投資をする。というように、1家計で2つのNISAの活用も有効です。

 とはいえ、米国株に興味はあっても年齢的にあまりリスクが取れず、一般NISAの非課税投資枠が大きく余るようなら、前述のおひとりさま同様、残りの投資枠内で投資信託の購入を検討してもよいでしょう。

万能ではない!NISAの落とし穴もチェック

 税制面でメリットがあるNISAですが、注意すべき2つのデメリットについても知っておきましょう。

 1点目のデメリットは、損益通算ができないことです。

 NISAで保有する株式や投資信託を売却した際、もし損失が出たとしても、他の課税口座の売却益や配当などと相殺することができません。また、年間で発生した損失の繰越控除も適用外となります。

 2点目のデメリットは、非課税期間終了後、NISA口座から課税口座へ株式や投資信託を移す際に、「時価」が取得価格になることです。

 取得価格によっては、実際はもうかっていなくても、課税されてしまうのです。具体的に説明していきます。

 たとえば、一般NISAで株式を120万円で購入し、非課税期間終了時に140万円に上がったとします。課税口座に移して保有を続けることにした場合、時価である140万円が取得価格となるため、その後値上がりして150万円で売却した場合に、増えた分の10万円に税金がかかります。これは特に問題ありません。

 デメリットとなり得るのは、非課税期間終了時に値下がりした場合です。たとえば100万円に値下がりし、株価の回復を待とうと課税口座に移すと、取得価格は時価の100万円。その後、購入時の120万円まで回復したところで売却すると、なんと、取得価格から20万円値上がりしてから売却した、とみなされて、20万円に約20%(約4万円)の税金がかかってしまうのです。購入金額と同じ120万円で売却したにも関わらず、課税によって損をしてしまうというわけです。

 このようにNISAは、投資の利益が出た場合はメリットがあるものの、損失が出た場合はデメリットとなる可能性があるということを理解したうえで、上手に資産形成に取り入れていくことが大切です。

 NISAの特徴を理解し、投資の目的ごとに適した制度を使いこなせば、より有利な資産形成が可能になります。今回ご紹介した活用術を参考に、ご自身のNISA活用プランを検討してみてはいかがでしょうか。

(みらい女性倶楽部・冨田仁美)

(イラスト・小林麻美)

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