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ゼロからはじめる資産形成⑤ 知ってるようで知らない!iDeCoで得する人しない人

    iDeCoは原則60歳になるまで引き出すことができない、いわば強制的に老後資産を作ることのできる制度
    iDeCoは原則60歳になるまで引き出すことができない、いわば強制的に老後資産を作ることのできる制度

     老後のための資産形成手段として、ここ数年で認知度もあがり、始めた人も多い「iDeCo(イデコ)」。国民年金基金連合会の発表によると、2021年6月末時点の加入者総数は約206万人と、10年前の約13万人と比べ15.8倍も増えています。とはいえ、自分にとって本当に得なのかわからず、始めるのを躊躇している人もまだまだ多いのではないでしょうか。iDeCoはすべての人にお得な制度というわけではありません。今回は、iDeCoの制度概要と、「iDeCoで得する人としない人」についてお伝えします。

    iDeCoとは?

     iDeCoとは、国の私的年金制度「個人型確定拠出年金」の愛称。自分で掛金を拠出し、自分で選んだ商品で運用し、60歳以降に、積み立てた資産を年金や一時金などの方法で受け取ることができる制度です。

     原則60歳になるまでは、資産を引き出すことができず、いわば“強制的”に老後資産を作れるため、意思が弱く貯金を使ってしまうような人は、特に活用したい制度です。

     iDeCoでは、働き方によって、積み立てできる掛金に上限が定められています。たとえば、会社員は、勤務先の企業年金等の有無によって幅があり、月額1万2000円(年額14万4000円)~月2万3000円(年額27万6000円)です。公務員は月額1万2000円(年額14万4000円)、自営業や学生は、国民年金基金または付加年金と合わせて月額6万8000円(年額81万6000円)と、最も多く掛けられます。会社員や公務員に扶養されている配偶者も加入することができ、上限は月額2万3000円(年額27万6000円)です。

     また、これまで企業型確定拠出年金の加入者は、企業型年金規約でiDeCoに同時加入できる旨を定めていなければ加入できなかったのですが、2022年10月からは、この要件なしで加入できるようになるため、さらに加入者は増えそうです。

     さらに2022年5月からは、60歳を過ぎて再雇用制度などで厚生年金に加入している場合や、国民年金の任意加入被保険者は、65歳になるまで拠出を続けられるようになりますので、「あと少ししかないから」と躊躇していた50歳代の方も、検討の余地があるでしょう。

     それでは次に、iDeCoで「得するor得しない」のポイントとなる、主なメリットとデメリットをみてみましょう。

    iDeCoの主なメリット<税制優遇>

     iDeCoには、大きな税制優遇メリットがあります。運用して得られる利益は、すべて非課税であることに加え、拠出した金額の全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象とでき、毎年の所得税と住民税を大きく減らせます。また、給付を受けるときには、退職所得控除や公的年金等控除の対象となり、退職金や公的年金と合算となりますが、税金を減らせる仕組みが整っています。

    iDeCoの主なデメリット<手数料>

     メリットが大きい一方で、掛金を拠出している間や、給付を受ける際に各種手数料がかかることに注意が必要です。実はiDeCoで得するかどうかを考える際、この手数料が鍵となるのです。かかる手数料をまとめました。

     このように、iDeCoにはさまざまな手数料がかかり、特に掛金を拠出している間ずっと毎月かかる手数料は、資産の運用次第では、目減りする可能性もあるため、要注意です。どのくらい手数料がかかるのか知ったうえで、得する使い方をしたいものです。

    iDeCoで得する人としない人

     それでは、iDeCoで得する人と、得しない人とは、どんな人なのでしょうか。リスク性商品で運用している場合、運用益については不明なため、得する(かもしれない)として解説します。

    iDeCoで得する(かもしれない)人

    ■税金(所得税と住民税)を払っている人

    ■認可保育園等に通う0~2歳の子どもがいる人

    ■税金は払っていないが、つみたてNISAを満額していてもっと積立投資をしたい人

    ■60歳以降も再雇用を予定している人

     iDeCoには毎月少なくとも171円の手数料がかかるため、年間2052円は資産が減ることに。その手数料分を超えて「得する」人の代表格は、節税のメリットを得られる人です。

     たとえば、月額2万3000円の掛金を拠出している人であれば、所得税率10%・住民税率10%とした場合、年間5万5200円も税金を減らすことができるので、手数料を差し引いても、5万円以上得しています。また、0~2歳の認可保育園等に通う子どもがいる人は、市町村民税の所得割の金額に応じて決まる保育料も下がる可能性があり、得するかもしれません。

     また、専業主婦などで税金は払っていないけれど、積立投資を積極的にしており、すでにつみたてNISAなど他の非課税制度を満額している人も、得するかもしれない人です。

     通常、金融商品を運用すると、運用益には約20%課税されますが、iDeCoなら非課税で再投資されます。たとえば、毎月2万3000円、年利回り2%で20年間積立できた場合、約124万円の利益が生まれます。通常の課税口座の場合、約25万円の税金が引かれますが、iDeCoであれば引かれません。20年間の手数料である4万1040円を大きく上回っているため、得していると言えますね。

     現在50歳代後半などで加入を躊躇していた人も、もし再雇用を検討しているのであれば、65歳になるまで掛金拠出することができ、所得控除や運用益非課税の恩恵を受けられるため、得する人に入ります。

    iDeCoで得しない(かもしれない)人

    ■リスク性商品の投資が怖い専業主婦(夫)

    ■納税額が低い人(パート勤務や、住宅ローン控除適用中など)

    ■始めてから掛金を拠出するのをやめるかも知れない人

    ■貯蓄がなく、近い将来教育費などで大きなお金がかかる人

     iDeCoで得しない人は、メリットである所得控除や運用益非課税の恩恵を受けられない人や、手数料で資産が目減りする人と言えます。

     たとえば、専業主婦(夫)がiDeCoで元本確保型の預金商品(金利:年0.02%)で運用した場合、掛金27万6000円に対して利息はたったの55円。一方、必ずかかる手数料は、前述のように最低でも年2052円ですから、資産は増やせるどころか減っていきます。

     また、もともとの納税額がほとんどない場合も、iDeCoで得しない可能性があります。特に住宅ローン控除額が大きく、所得税では引ききれず住民税からも控除されているケースでは、iDeCoの加入は慎重に。iDeCoによる所得控除を受けると、住宅ローン控除は住民税含めても引ききれなくなるかもしれません。また、こうした人はそもそもローン返済額が大きい可能性があり、60歳まで引き出せないiDeCoを始めると、まったく貯金ができなくなる恐れもあります。

     また、せっかくiDeCoを始めても、掛金の拠出をやめてしまう人も得しない人です。少し安くはなりますが、毎月の手数料はかかりますし、所得控除は受けられないため、資産は目減りしてしまいます。

     その他、貯金がないのにiDeCoを始めてしまい、教育費などのお金が不足してローンを組んでしまう人も、得しない人と言えそうです。iDeCo資産は60歳まで引き出せないことを踏まえ、貯金をしてからにするか、貯金しながら拠出できる掛金額に設定すると良いでしょう。

    ▽まとめ

     iDeCoで得する人得しない人を、iDeCoのメリットである所得控除と、デメリットである手数料の観点から考えました。老後資産を作りたい、働いて税金を働いている人には、iDeCoは得する可能性が高まりそうですね。

     次回は、実際にiDeCoなどの資産形成の始め方について解説予定です。

    (ライフヴェーラ代表/みらい女性倶楽部 鈴木さや子)

    (イラスト・小林麻美)

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