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ゼロからはじめる資産形成⑥ 誰も教えてくれない…NISAとiDeCoを始める際のポイント

NISAやiDeCoを始める際にはコールセンターも活用しよう
NISAやiDeCoを始める際にはコールセンターも活用しよう

 資産形成にNISAやiDeCoを活用したいと思っても、始め方がわからないという人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、NISAとiDeCoの始め方、上手な金融機関選び、知っておくとよい注意点についてお伝えします。

NISAとiDeCo、どちらも金融機関選びが大切

 NISAもiDeCoも、始めるには金融機関で口座の開設が必要です。銀行・証券会社・郵便局・ネット銀行・ネット証券・投資信託の運用会社・生命保険会社・信用金庫・労働金庫など、多くの金融機関で口座を開設することができます。

1人につき1口座

 ただし、NISAは1年ごとに1口座、iDeCoはひとり1口座と決まっているので、どちらの制度も、同時に複数の金融機関で口座開設することはできません。

 どちらも金融機関の変更は可能(NISAは1年ごと)ですが、変更には手間や時間がかかります。また、iDeCoは変更の際、金融機関によっては手数料がかかる場合があります。保有する運用商品を一旦すべて現金化する必要があり 、約2~3カ月の変更手続き中は運用ができず、その間、株式市場が上昇してもその恩恵は受けられません。

 これらのことから、金融機関選びは慎重に行うことをおすすめします。

金融機関を見るべきポイントは「品揃え」「コスト」「利便性」

 口座開設する金融機関を選ぶ際、注目するポイントは、NISAとiDeCoどちらの制度でも、「品揃え」「コスト」「利便性」の3つです。この3つのポイントの重要度や優先順位は、活用する制度によって異なります。詳しくみていきましょう。

★NISAの金融機関は「品揃え」で選ぼう

 NISAには、一般NISAとつみたてNISA、そして未成年専用のジュニアNISAがあります。一般NISAとジュニアNISAは、国内外の上場株式・投資信託・REIT(上場不動産投資信託)・ETF(上場投資信託)など投資対象が幅広く、一度にまとめて投資することも、積み立てすることもできます。

一方、つみたてNISAは、投資対象が投資信託とETFに絞られ、投資方法も積み立てに限定されています。そのため、NISAでも活用する制度によって、金融機関選びの注目ポイントが違うのです。

★一般NISA(ジュニアNISA)は「品揃え」「コスト」「利便性」の順でチェック

 一般NISAは、投資対象の幅の広さが特徴ですが、具体的にどの商品を対象とするかは金融機関ごとに異なります。たとえば、証券会社でも、外国の株式やIPO(新規公開株)をNISAの対象とするかはまちまちです。米国株に投資をしたい場合、証券会社ならどこでもできるだろうと口座開設し、対象でなかったら、せっかくのNISA口座が活かせないことになります。

 また、投資信託を購入する場合も、目当ての商品の取扱いがあるか、購入時の手数料の有無などをチェックする必要があります。同じ投資信託でも取り扱う金融機関によって手数料がかかるところと、かからないところがあります。

 利便性の面で言うと、ネット証券を選ぶ場合、取引をする画面の見やすさ、情報の豊富さもポイントになります。口座を開設する前に、サイトを開いてイメージをつかんでみましょう。一方、店舗型の証券会社を選ぶ場合は、窓口の担当者は信頼できるか、出向きやすい立地であるかなど、スムーズに取引できる環境であることがポイントになります。

★つみたてNISAは「品揃え」に加えて「積み立てに関するルール」をチェック

 つみたてNISAの投資対象は、国が定める低コストなどの基準をクリアした投資信託とETFに絞られていますが、こちらも金融機関によって品揃えはまちまちです。取り扱う商品数も、店舗のある銀行や証券会社などは4~5本と少数に絞る傾向にあり、比較的商品数が多いネット証券では約20~150本と、品揃えにかなりの差があります。品揃えが少なくても、投資したい商品があればよいので、気になる金融機関のホームページでまずは取扱商品を調べてみましょう。

 次にチェックしたいのは、積み立ての最低額、積み立てサイクル(毎月・毎日・年2回など)のルールの違いです。最低100円から積み立てできるところもあれば、最低が1万円のところも。こちらも各金融機関のホームページで確認できます。

★iDeCoの金融機関は「コスト」重視で選ぶ

 前回の記事でもご紹介した通り、iDeCoにはどの金融機関で加入しても同額かかるコスト(国民年金基金連合会・信託銀行に支払うもの)と、金融機関ごとに異なるコスト(運営管理機関に支払うもの)があります。

 運営管理機関とは、銀行や証券会社などのiDeCo加入の窓口となる金融機関のことです。金融機関により、毎月の口座管理料が無料~440円、年間にすると無料~約5000円と、コストに大きな違いがあります。口座管理料は、運用の成果に関わらず差し引かれ、資産の引き出しができる60歳までかかり続けるので、なるべく抑えた方がよいでしょう。

★iDeCoは「コスト」「品揃え」「利便性」の順でチェック

 コストに次いで品揃えも、NISA同様、要チェックです。iDeCoの場合も金融機関により品揃えはまちまちです。iDeCoは商品数の上限が決まっており、最大でも35本ですが、少ないと3本のところもあり、つみたてNISAほどではないものの金融機関により差があります。

 品揃えを見る際は、投資信託のコストである信託報酬の比較も大切です。信託報酬は、先ほどの口座管理料とは別で、投資信託を保有している間にかかるコストです。こちらも運用成果に関わらずかかるコストなので、同じ投資スタイル、同じ投資先であれば、なるべく低いものを選ぶようにしましょう。

 そして見落としがちなのが、加入者用のサイトやコールセンターの使いやすさです。運用商品の見直しや各種変更手続きに利用する、サイトやコールセンターの使い勝手も意外と重要です。iDeCoは、転職や結婚などで働き方が変わった時に資産を持ち運ぶなど、長い加入期間の中ではイレギュラーな手続きが必要となる場面もあります。そのようなとき、オペレーターが案内してくれるコールセンターは、頼りになる存在です。平日の夜や休日も対応しているかなど、サービス内容の確認もしておきたいですね。

口座開設は「ネット・窓口・郵送」のいずれかで

 一部の金融機関では、必要書類をウェブ上にアップロードすることで、ネットで口座開設ができます。一方、ネットで口座開設できない金融機関を利用する場合や、ウェブ操作が不安な人、説明を受けながら手続きしたい人は、窓口に出向くか、コールセンターに書類請求し郵送します。

<NISAの口座開設フロー>

 NISAの口座開設には、本人確認書類のほかに個人番号(マイナンバー)の届け出が必要です。ネットでできる金融機関の場合、フォームの入力と、必要書類をウェブ上にアップロードすることが必要です。

 書類を取り寄せて郵送で申し込む場合は、金融機関のホームページから口座開設に必要な書類を請求します。

 NISAを始めたい金融機関に口座を持っていない場合は、まず総合口座の開設が必要です。証券会社の場合は、総合口座とNISA口座の開設を同時に、銀行の場合は、総合口座のほかに投資信託口座とNISA口座を同時に開設します。

 店舗のある金融機関の窓口や、ネットで口座開設する場合は、最短で当日~数日で取引開始できます。書類を取り寄せ、郵送でやり取りすると、取引開始までに約1週間程度かかります。

<iDeCoの口座開設フロー>

 iDeCoは、一部の金融機関でネットでの手続きが完結できるようになりましたが、まだ書面によるやり取りが必要な金融機関がほとんどです。ネットで完結できる場合を除き、店舗のある金融機関であれば窓口に出向くか、ホームページから必要書類を取り寄せます。

 口座開設に必要な「加入申込書」は、被保険者ごとに第1号用・第2号用・第3号用に分かれています。正しく請求しましょう。また、会社員などの第2号被保険者の方は、勤め先の事業主証明も必要です。

 iDeCoの口座開設は、NISAよりやや時間がかかります。書類請求から口座開設まで約1カ月半~2カ月。ネットで完結の場合でも、この時間から郵送にかかる時間が短縮できる程度です。また、iDeCoの掛金の引落しは毎月26日と決まっているので、実際に引落しが開始するのは、口座開設の手続きをしてから2~3カ月後となるでしょう。

始めるときに知っておくとよい注意点

 最後に、口座開設をするにあたり、知っておくとよい注意点をご紹介します。

<NISA口座開設の注意点>

 NISAは、1月1日から12月31日まで、1年ごとに使える非課税枠が決まっていますが、その年の非課税枠を使うには、9月中旬~9月末(金融機関によって異なる)までに口座開設が済んでいないといけません。それ以降の手続きは翌年分となります。

 また、2021年4月からNISAの口座開設は簡易開設に一本化され、従来、税務署の確認期間(2週間程度)を経て口座開設していたのを、確認を待たずに開設できるようになりました。これにより、以前より早く取引開始できるようになりましたが、NISAは1人1口座のため、NISA口座開設後、税務署で複数口座が確認された場合は非承認となり、課税扱いとなってしまいますので注意しましょう。

<iDeCo口座開設の注意点>

 iDeCoは、公的年金に上乗せする私的年金制度です。そのため、加入申し込みの際に基礎年金番号が必要です。あらかじめ、年金手帳や、年に1回届くねんきん定期便で確認しておきましょう。会社員の方であれば、お勤め先の総務などで確認してもよいでしょう。

 また、加入申込書のほかに提出する「商品配分指定書」に戸惑う方も多いです。商品配分指定書とは、掛金をどの商品にどれくらい割り振るかを指定するものです。加入する金融機関の商品ラインナップの中から、投資したい商品を選び、もし商品が1つなら100%、複数なら希望する割合に応じて1%単位で指定します。

 NISAもiDeCoも、税制のメリットを受けながら資産形成できるので、ぜひ活用したい制度です。口座開設手続きのハードルはたしかに少々高いかもしれませんが、手間や時間がかかるのは、最初だけです。有利に資産形成をするためのステップと割り切りましょう。

 そして、ぜひ覚えておいていただきたいのは、コールセンターの活用です。コールセンターというと、長く待たされるイメージがあるかもしれませんが、NISAやiDeCoの各金融機関のコールセンターは比較的つながりやすいです。書類の請求から、書き方、手続きの方法に至るまで、丁寧に案内してくれる頼もしいサービスです。

 NISAやiDeCoを始めたいと腰を上げたのに、手続きの途中で萎えてしまってはもったいないです。わからないことはコールセンターにサポートしてもらい、有利な資産形成をスタートしてください。

(みらい女性倶楽部 冨田仁美)

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