映画「MINAMATA」公開=アイリーン・美緒子・スミス・環境ジャーナリスト
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映画「MINAMATA」公開=アイリーン・美緒子・スミス 環境ジャーナリスト/856
水俣病を世界に伝えた写真集『MINAMATA』。この写真集を原案とした映画が今秋、公開される。写真集の共著者であるアイリーン・美緒子・スミスさんに、当時の取材の様子や、映画が今、公開される意義を聞いた。
(聞き手=りんたいこ・ライター)
「水俣病は終わっていない。解決へのきっかけを作りたい」
「患者さんたちの記録を今の時代に伝えたい。写真集を再出版します」
── 元夫の米国人報道写真家W・ユージン・スミスさんをモデルにした映画「MINAMATA─ミナマタ─」が9月23日に公開されます。
アイリーン 水俣病患者さんと家族の苦しみ、人間の美しさや親子の絆、みんなが一緒に努力すると本当に大きいことができるということを知ってほしい。彼らが頑張ったから環境対策も厳しくなり、そこで授かった子どもたちが親になっている。そういうつながりや恩恵を、当時を知らない人たちに知ってもらうきっかけになる。そこに、この映画の意義があると思います。(ワイドインタビュー問答有用)
── ユージンを演じるのは世界的に知られる米国人俳優ジョニー・デップさんです。デップさんとはどのような話をしましたか。
アイリーン ジョニーとは、2018年秋に彼が日本に来た際、一緒に昼食を取りながら初めて話をしました。彼は、「水俣の患者さんたちは長い間苦しんできた。問題は今も解決されておらず、いまだに続いていることが信じられない」と話していました。それから、「(名前の)Wは何の略か」と聞かれるたびに、本当は「ウィリアム」なんだけれど、ニコッと笑って「ワンダフルだ」と答えていたユージンの遊び心を、「すごく楽しい」とも言っていました。
── 改めて、今回の映画化をどう受け止めていますか。
アイリーン 当時を知っている私としては複雑な気持ちもありますが、ユージンの写真や私たちの仕事が今、取り上げられ、さらに映画にしたいと言われたことは、やっぱり幸福なことです。私たちが目撃して、写真と文章に収めたものを今、より広い世界に、そして当時生まれてもいなかった世代に伝えていけるのはうれしいですね。
水俣病患者とその家族に迫った、ユージンさんとアイリーンさんによる写真集『MINAMATA』は、1975年に米国で出版されるや世界に大きな反響を巻き起こした。水俣病患者の上村智子さんが母と入浴する模様を収めた「入浴する智子と母」はその象徴だ。映画では原因企業チッソに補償を求め抗議運動をする患者家族や、その様子を取材するユージンさんと女優の美波さんが演じるアイリーンさんの姿を描いていく。
今回の映画ではプロデューサーも兼務するデップさん。映画が初披露された昨年2月のドイツ・ベルリン国際映画祭の記者会見で、もともとユージンさんに憧れていたこと、水俣病に関する記事を読んで知識を深めていくうちに「この歴史は語り継がれなければならないと思った」と語っている。
患者と家族の「覚悟」
── 日本人編集者から水俣病の話を聞き、取材を決断します。水俣病の話を聞いた時はどう思いましたか。
アイリーン 世界に伝えなきゃと直感的に思いました。ユージンは太平洋戦争の時、(従軍カメラマンとして)サイパンや硫黄島に行っていたし、沖縄では撮影中に負傷していて、自分の前世はきっとあの地域の人間だったと運命を感じていました。当時の私は社会のために何をしたらいいのか分からなかった。そんな時にユージンと出会い、この話を聞きました。大好きな日本で大変なことが起きている。高度成長の中で苦しんでいる人がいる。そこに行きたいと思いました。
── 現地に住み込みながらの『MINAMATA』の取材は71年から3年間に及びました。患者や家族とはどのように信頼関係を築いていったのですか。
アイリーン 私たちが写真を撮ったのは、ちょうど、裁判(患者とその家族が企業の責任と損害賠償を求めてチッソを提訴した69〜73年の第1次訴訟)をやっていた時。そもそも裁判で闘った人たちは、我が子への愛情、自身の尊厳、大切なものを守るため、政府任せの和解はできないという人たち。言葉では伝わらない苦しみも写真でなら伝わるのではないか。だからどんどん撮ってくださいという覚悟がありました。
── 取材する側も自分たちのことを知ってもらわなければなりません。
アイリーン 私たちが住み着いたところは、いろんな患者さんたちの家に歩いて数分で行けるほど近い場所です。私たちの家の縁側は道路に面していて、こっちの生活は丸見え。布団を干して雨になったら取り込むのを忘れているのが見えるほどでした。私たちは取材をする側でしたが、裁判所へは患者さんたちと一緒に大きいバスに乗り、(前日入りの際は)旅館で布団を並べて寝ていました。だから、私たちがどういう…
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週刊エコノミスト
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