ブロックチェーン技術が変える雑誌付録=永江朗
出版業界事情 雑誌付録にブロックチェーン導入
ファッション誌やライフスタイル誌では相変わらず付録付きのものが好調だが、「NFTデジタル特典付き出版物」というものが登場した。開発したのは電子書籍取次大手のメディアドゥと出版取次大手のトーハン。簡単にいえばブロックチェーン技術を使ったデジタルの付録を紙の雑誌や書籍に付けようというのである。紙の雑誌・書籍を書店で購入する動機付けである。
仕組みはビットコインと同じようなもの。NFTとは「Non-Fungible Token」(非代替性トークン)の略。メディアドゥのブロックチェーン技術によって個々のトークン(この場合は付録)に識別子が付けられ、固有性・唯一性があり、所有権を証明することもできる。購入者は書籍・雑誌に添付されたコードを自分の端末で読み込むことで、デジタル特典(付録)を入手する。
第1弾は『週刊SPA!』(扶桑社)の10月19・26日合併号特装版で、付録はグラビアアイドルの「デジタルトレーディングカード(トレカ)」。同号は創刊33周年で33人のグラビアアイドルが登場。袋とじされたQRコードをスマートフォンなどで読み取ると、トレカがランダムで5枚入手できる。デジタルトレカは「メディアドゥNFTマーケットプレイス(仮称)」上で譲渡や交換も可能だ。第2弾は『岡崎紗絵1st写真集 すがお。特装版』(主婦の友社)、第3弾は『北川綾巴写真集 特装版』(扶桑社)。
これまでも紙の書籍・雑誌にコードを付けてデジタル付録を入手できるものはあったが、ブロックチェーン技術を使って資産的価値を持たせたのは初めての試みである。コレクターの心理に訴えようという狙いだ。NFTは今、注目される技術で、画像や映像などに付与(データのひも付け)すれば、版画や写真プリントと同じようにコレクションや交換・売買の対象になり得る。
今回、第3弾まではいずれもアイドルの写真が付録となったが、これがコミックやゲーム、ライトノベルに広がると別次元の展開も見えてくるかもしれない。2020年にはポケットモンスター関連の希少なカードが2500万円で購入されたというニュースもあったのだから。
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