教養・歴史アートな時間

映画 MONOS 猿と呼ばれし者たち 水銀のように流動しながらカオスの内臓を探っていく=芝山幹郎

(c) Stela Cine, Campo, Lemming Film, Pandora, SnowGlobe, Film i Vast, Pando & Mutante Cine
(c) Stela Cine, Campo, Lemming Film, Pandora, SnowGlobe, Film i Vast, Pando & Mutante Cine

水銀のように流動しながら、カオスの内臓を探っていく=芝山幹郎

 水銀のような映画だ。流動する粘液が形を変えつづけ、輝きと毒性を片時も失わない。怖くて、危うくて、観客の眼と耳に強く絡みつき、なおかつ悪夢のような臨場感が並外れている。出てくる人間と土地が、脳裡にこびりつく。

「MONOS 猿と呼ばれし者たち」の主な登場人物は、年端も行かぬ8人のゲリラ兵だ。うっかり少年兵と書きそうになったが、なかには少女の姿も見受けられる。少年なのか少女なのかよくわからない兵士もいる。そもそも性別を問うこと自体が無意味に思える。彼らは、内戦の終結しないコロンビアの山岳地帯をアジトとしている。

 といっても、敵は明示されない。若者たちは、「組織」から派遣された「メッセンジャー」(ウィルソン・サラザール)という筋肉質の小男の訓練を受ける。

残り943文字(全文1301文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で過去8号分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

6月6日号

上がる金&揺らぐドル 史上最高値への地殻変動16 米実質金利との逆相関 崩れた背景に中銀の買い ■村田 晋一郎/谷道 健太19 これで分かった! 「金」の基礎知識 Q&A ■池水 雄一 徹底展望 2023年末 金価格の見通し22 2300ドル 非民主的国家が買い増し 西側への不信で分断拡大 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事