映画 MONOS 猿と呼ばれし者たち 水銀のように流動しながらカオスの内臓を探っていく=芝山幹郎
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水銀のように流動しながら、カオスの内臓を探っていく=芝山幹郎
水銀のような映画だ。流動する粘液が形を変えつづけ、輝きと毒性を片時も失わない。怖くて、危うくて、観客の眼と耳に強く絡みつき、なおかつ悪夢のような臨場感が並外れている。出てくる人間と土地が、脳裡にこびりつく。
「MONOS 猿と呼ばれし者たち」の主な登場人物は、年端も行かぬ8人のゲリラ兵だ。うっかり少年兵と書きそうになったが、なかには少女の姿も見受けられる。少年なのか少女なのかよくわからない兵士もいる。そもそも性別を問うこと自体が無意味に思える。彼らは、内戦の終結しないコロンビアの山岳地帯をアジトとしている。
といっても、敵は明示されない。若者たちは、「組織」から派遣された「メッセンジャー」(ウィルソン・サラザール)という筋肉質の小男の訓練を受ける。
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週刊エコノミスト
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