ゼロからはじめる資産形成⑨ サラリーマン必見!確定申告しなければいけない人、しないと損する人
そろそろ確定申告の時期ですね。多くの会社員は、年末調整の書類を勤務先に出せば納税に関する手続きが済んでしまうこともあり、確定申告のことをよく知らないという人もいるのではないでしょうか。でも実は、確定申告の知識がないために、確定申告をしなくてはいけないのに申告を忘れてペナルティを課せられるなど、損をしてしまう人がいるのも事実です。今回は、確定申告の基本と、「確定申告しなければいけない人、しないと損する人」についてお伝えします。
確定申告とは
確定申告とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得の金額と、それに対する所得税等の額を計算して「確定」させる手続のことを言います。
個人事業主など、給与所得者以外の人は、確定申告で税額を確定させ、納税手続きを行います。一方、給与所得を得ている会社員などは、勤務先の「年末調整」手続きで納税手続きが完了するため、原則、確定申告は不要です。
ちなみに年末調整とは、毎月の給与から差し引かれる源泉徴収額と実際の納税額との過不足を、会社が精算する手続きを指します。
ただし、会社員などでも、一定金額以上の所得がある人など確定申告をしないといけない人もいますし、確定申告をすることで、税金が戻ってくるケースもあります。給与所得者であっても、確定申告の知識は必要なのです。
確定申告しなければいけない人
給与所得者以外で納税額がある人は、原則、翌年2月16日から3月15日の間に確定申告をしなければいけません。また、給与所得者でも確定申告をしなければいけないのは、次のうち1つでも当てはまる人です。
給与所得・退職所得以外の所得が20万円を超える人には、不動産所得や事業所得がある人のほか、不動産を売ったり株式売買したりして、譲渡所得を得た場合なども該当します。
また、確定申告とは呼ばれませんが、贈与を受けた場合など贈与税が発生した場合の申告期限も確定申告と似ており、もらった年の翌年の2月1日から3月15日です。
確定申告を期限内にしなかったらどうなる?
確定申告をしなければいけない人が期限内に申告をしなかった場合、次のペナルティが発生します。
・無申告加算税:期限内に申告しなかったことへのペナルティ
納税すべき金額以外に上乗せされる税金のこと。原則、納付すべき税額に対して、50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の割合を乗じて計算した金額となり、かなり大きいです。ただし、税務署調査の事前通知前に自主的に期限後申告をした場合は、15%や20%ではなく5%に軽減されますし、少し遅れる程度であれば課されないこともあります。
・延滞税:納税が遅れたことへのペナルティ
申告期限までに税金が納付されない場合に、原則、期限の翌日から納付日までの日数に応じて自動的に課される税金のこと。期限の翌日から2ヵ月経つと、税率があがり延滞税が高くなります(令和3年の場合、2ケ月までは年2.5%、2ケ月超は年8.8%)。
なお、延滞税は本税だけを対象として課されるものであり、加算税などに対しては課されません。
また、故意に申告書を提出しないことは「ほ脱」といって、「5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、または、その両方」が課されるなど重大な犯罪となってしまいます。
確定申告しないと損する人
確定申告をしなくて良い会社員でも、確定申告をすれば税金が戻る人、すなわち確定申告しないと損する人がいます。損する可能性があるのは主に次のような人です。
① 年末調整で所得控除の書類を提出できなかった人
年末調整の手続きで、生命保険料控除やiDeCo加入者が受けられる小規模企業共済等掛金控除の証明書などを期限までに出せなかった場合、まずは勤務先に間に合わないか問い合わせを。できなかった場合は自分で確定申告をしないと、還付は受けられません。
② 年末調整のあとに結婚した人
所得が一定金額以下の配偶者がいる場合に受けられる「配偶者控除」や「配偶者特別控除」は、12月31日時点の状況で判断されるため、12月に結婚した場合など、配偶者の所得によっては配偶者控除などを申告でき、還付を受けられる可能性があります。
③ ふるさと納税をした人
ふるさと納税で受けられる「寄附金控除」は、年末調整の対象外なので、確定申告をしないと還付を受けられません。また、確定申告不要のワンストップ特例制度を利用していても、申請が期限に間に合わなかったり、寄附先が5自治体を超えてしまったりした場合、また、医療費控除など他の理由で確定申告をする場合は、すべての寄附について確定申告しないと控除を受けられません。自治体から送られる「寄附金受領証明書」は取っておきましょう。
④ 10万円を超える医療費がかかった人
世帯における医療費から保険会社からもらった給付金などをひいた金額が、年間で10万円(総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額)を超えた場合に受けられる「医療費控除」は年末調整の対象外なので、確定申告をしなければ還付を受けられません。なお、対象の医薬品の購入金額が年1万2000円を超えたら受けられる医療費控除の特例(セルフメディケーション税制)もあります。
⑤ 住宅ローンを組んで1年目の人
住宅ローンを組んだら受けられる「住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)」は、初年度のみ年末調整はできず、確定申告が必要です。
⑥ 株取引の損失がある人
株取引の損失がある場合、確定申告をすることで、その年の利子所得や配当所得と損益通算ができます(配当所得については申告分離課税を選択したもののみ)。また、損益通算しても控除しきれない損失は、確定申告すれば、翌年以後3年間、株取引で得られた利益から控除できます。
⑦ 年の途中で退職して年末調整を受けていない人
年の途中で退職すると、それまで給与から源泉徴収されていた所得税は納め過ぎの可能性があります。その後再就職をしておらず、年末調整を受けていない場合は、確定申告をすることで還付を受けられる可能性があります。
⑧ 災害・盗難に遭った人
台風や火災などで住宅や家財に損害を受けたり、盗難に遭ってしまったりした場合には、確定申告をすれば一定金額について還付を受けられます。なお、詐欺や恐喝は対象外です。税金を軽減できる控除には2つあり、雑損控除(所得控除)と災害減免法(税額控除)のどちらかの控除から有利な方を選べます(災害減免法による控除は所得金額1000万円以下の人のみ)。
以上、確定申告をしなければいけない人、しないと損する人についてみてきました。なお、このうち、所得税の還付を受けられる場合に行う還付申告は、確定申告期間とは関係なく、その年の翌年1月1日から5年間提出することができます。5年以内であればさかのぼって申告できますので、忘れていた場合はやってみてはいかがでしょうか。
(ライフヴェーラ代表/みらい女性倶楽部 鈴木さや子)