週刊エコノミスト Onlineゼロからはじめる資産形成

ゼロからはじめる資産形成⑩ わかればコワくない!株式投資のキホンを知ろう

ハードルの高そうな株式投資も、キホンをしっかりおさえておけば怖くはない
ハードルの高そうな株式投資も、キホンをしっかりおさえておけば怖くはない

「株式優待をもらってみたい」「株式で資産を増やしたい」と思うけれど、「まとまった資金がない」「ギャンブルのような印象があってコワい」「株式の選び方が分からない」と、株式投資に一歩踏み出せないという人もいるでしょう。

 そこで今回は、株式投資を始めるにあたり知っておきたいキホンをお伝えします。意外と身近で、そんなにコワいものではないことがお分かりいただけると思いますよ。

株式とは…

 株式は、企業が事業拡大のため、設備投資などにかかる必要な資金を調達する手段として発行するものです。株式を買うことは、「投資家」としてその企業に「出資」することを意味します。

 株式を買うと、その企業の「株主」になり、オーナーの権利を一部所有することになるため、株主総会にも出席できます。

 経営にもの申す事ができる一方で、出資したお金が返ってくる保証はありません。株主にとっての出資の見返りは、主に次の3つの「期待」になります。

 ひとつは、業績が評価されることで株価が上がる「値上がり益」。もう一つは、業績に伴って分配される「配当」。そして株主へのお礼としてもらえる「株主優待」です。

株式市場とは

 私たち個人投資家が買える株式は、株式市場に上場している企業のものが対象です。株式市場とは、株式の売買を流通させる場所のこと。日本の株式市場には、東京証券取引所、大阪取引所、その他に3つの地方証券取引所(札幌・名古屋・福岡)があります。

 世界にも株式市場があります。主要なところでは米国のニューヨーク証券取引所、英国のロンドン証券取引所などがあります。日本から、ニューヨーク証券取引所に上場する「米国株」などを売買することもできます。

 売買が流通するとはいえ、個人投資家が取引をするのは株式市場ではありません。証券会社を通して出した売買の注文が、株式市場に送られて初めて成立するのです。

株式投資スタイル

 株式の売買をする人は、個人投資家だけではありません。ほかにも「外国人投資家」、年金などの運用をする「機関投資家」など、百戦錬磨のプロの投資家も株式市場に参加しています。

 多種多様の参加者がいるため、投資の方法もさまざま。デイトレードのような売買の間隔が非常に短い投資スタイルもあれば、半年や1年、数十年も保有する中長期の投資スタイルもあります。

 株式は、基本的に株式市場の取引時間内であれば、いつでも売買できます。ただし、一日の取引の多さは銘柄ごとに異なるので注意が必要です。とはいえ、流通量の少ない銘柄でない限り、株式は市場を通していつでも換金できる資産と考えてよいでしょう。

株式投資のメリット・デメリット

 冒頭でお話した「資産を大きく増やせるかも!」と「ギャンブルでは?」という真逆のイメージは、株式投資におけるメリットとデメリットを表現していると言ってよいでしょう。それぞれの3つのポイントについて詳しく見てみましょう。

<株式投資の3つのメリット>

① 値上がり益が期待できる

 業績が順調に伸び、会社の儲けが増えることで、株価の値上がりが期待できます。買った時よりも売る時の株価が値上がりしていれば、その分が利益となります。

② 配当がもらえる

 企業は、会社の決算時に利益の一部を配当として株主に還元します。配当の有無、配当額は企業によりまちまちです。

③ 株主優待がもらえる

 株主に対し、企業の独自商品やサービス、ポイントなどをお礼としてプレゼントするのが株主優待です。近年は、株主期間の長さによりサービスを上乗せする企業もあります。

<株式投資の3つのデメリット>

① 値下がりにより損失を被る

 業績が落ち込んだり、その会社に魅力を感じない投資家が増えたりすると、株価の下落や低迷につながります。買った時よりも売る時の株価が下がっていれば、その分が損失となります。

② 配当減額、優待廃止の懸念がある

 株主に対する配当や優待は、企業業績により変更されることがあります。配当が減額や無配(0円)となったり、優待が廃止になったりすることもあります。

③ 倒産で株式が紙切れになる可能性がある

 株式投資で一番残念なケースが企業の倒産です。倒産するとその株式は上場廃止となり、事実上ただの紙切れになってしまいます。当然、投資した金額は戻ってきません。

こうしてみると、株式投資のメリット・デメリットはまさに表裏一体であることが分かりますね。

株式投資は、いくらからできる?

 株式投資を始めるには、まず証券会社に口座を開設します。証券会社によって、開設方法は異なりますが、店舗に出向く、書類を取り寄せて郵送する、ネットで完結するなどがあります。いずれもマイナンバーカード(通知カード)と本人確認書類が必要です。

 また、実際に株式を買うには、購入代金相当額の資金を証券口座に入金してから、注文を出します。どの株式をどれくらい買いたいかでおおよその金額を計算し、株価の動きや購入にかかる手数料を考慮して少し余裕を持たせた金額を入金します。

 株式の購入代金がどれくらいになるかは、株価とその株式の単元株数のかけ算で求めます。単元株数とは、最低売買株数(1単元)のことです。

 日本の株式市場では1単元100株なので、たとえば株価が1株1000円なら、最低購入金額は1000円×100株=10万円となります。その株式を200株買いたいのであれば、購入金額は20万円ということです(別途、売買手数料がかかります)。

 東証一部に上場している企業は現在約2200社ありますが、そのうち約680社が10万円以内で買えます(2021/11/24現在)。まとまった額を準備しなくても、手の届きそうな企業も結構多いのです。

 一方、買いたい企業の株価が高くて手が出ない時は、100株よりも少ない、1株など「単位未満株」で購入できるサービスを提供している証券会社を利用するのも、一つの方法です。

 たとえば、ゲームで有名な任天堂は1株約5万円です。100株で約500万円となり、通常は多額の資金が必要ですが、1株から買える証券会社であれば約5万円で投資できるのです。単位未満株には株主としての議決権はありませんが、保有株数に応じ配当ももらえますし、少ない資金でも複数銘柄に分散投資できるため、知っておきたい便利なサービスです。

投資する株式はどう選ぶとよい?

 株式投資の初心者にとって、投資する株式をどう選んだらよいか悩みどころです。銘柄選びのおすすめの方法を3つご紹介します。

① 自分の知っている会社から選ぶ

 投資する会社は、財務面や決算内容など分析して選ぶのが理想ですが、専門的な数字を読みこなすのは簡単ではありません。しかし、自分の知っている会社であれば、これから伸びそうな分野の業種だ、とか、良質で市場ニーズのある商品が売れている、など、日常生活の中で推察しやすいでしょう。

 また、知っている会社であれば、日々の値動きの背景を理解できることもあり、全く知らない会社よりは、株価の上がり下がりに一喜一憂しないで済みます。

② スクリーニングを活用する

 配当や株主優待が欲しい人は、証券会社のサイトやYahoo!ファイナンスなどのスクリーニング機能を活用しましょう。条件を設定すると、簡単に検索できるツールです。たとえば、購入金額20万円以内で3月に株主優待の権利がもらえる会社とか、50万円以内で配当が年4%もらえる会社などの検索ができます。

 予算金額の範囲内で買える条件に合った会社を、スクリーニングでピックアップできるため、銘柄選びが楽になるでしょう。

③ 会社四季報を見る

 株式選びに興味が出てより多くの会社を知りたいなら、全上場企業の会社情報がわかる会社四季報を活用しましょう。

 会社四季報には、年4回発行され書店で購入できる本とオンライン版があります。本には、会社の特色、業績や注目すべき材料の記事、財務内容、小さいですが株価の値動きが分かるチャートが載っています。ペラペラとページをめくっているうちに、気になる会社を見つけられることもありますよ。

 オンライン版は有料ですが、会社四季報の内容が読めるほか、検索機能などのサービスも利用できます。オンラインのサービスもよいですが、横断的に色々な会社情報が見られる本が、最初はおすすめです。

NISA口座で非課税投資

 年間120万円までの株式投資であれば、運用益非課税のメリットが受けられるNISA口座を活用できます。NISA口座内で買った株式は、買い付けから5年間は、保有中に受け取る配当や売却時の運用益に約20%の税金がかかりません。ただし、その年において、NISAとつみたてNISAは併用できないことに注意してください。

 NISA口座で取引したい方がこれから証券口座を開設するならば、総合口座と一緒にNISA口座の開設もしておきましょう。

株式投資は自分の投資適正額を見極めて始めよう

「株式投資は、なくなっても構わない余裕資金で始めましょう」というフレーズを聞いたことはありませんか?そのお金がなくなったら生活に支障が出るならば、株式投資はしない方がいいですよ、というアドバイスです。

 どんなに将来を有望視できる会社でも、株式市場に「絶対」はありません。市場全体の大きな暴落に巻き込まれることもあります。そんな時にも適正な投資額であれば、慌てずに回復を待てます。

 では、自分にあった株式投資の適正額はどう見積もればよいのでしょうか。

 働いている人で収入があるならば、もし損失が出ても働けばカバーできる額、がひとつの目安になります。

 たとえば、資金回収が叶わない倒産の事態を想定するなら、投資額の全額。この会社なら半値以下にはならないだろうと見積もるなら、投資額の半分が損失額になります。この損失額を、働けばまた作れる、生活に支障はないと考えられるかどうかを目安にするとよいでしょう。

 自分に合った投資額を見極め、その範囲内ならば、株式投資もコワくありません!応援したい会社を見つけて、「ワクワク」を始めてみませんか?

(みらい女性倶楽部 冨田仁美)

インタビュー

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月9日号

EV失速の真相16 EV販売は企業ごとに明暗 利益を出せるのは3社程度■野辺継男20 高成長テスラに変調 HV好調のトヨタ株 5年ぶり時価総額逆転が視野に■遠藤功治22 最高益の真実 トヨタ、長期的に避けられない構造転換■中西孝樹25 中国市場 航続距離、コスト、充電性能 止まらない中国車の進化■湯 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事