ゼロからはじめる資産形成⑭ 資産運用の王道 コツコツ「積立投資」は万能?メリットと注意点をしっかり押さえよう
昨今、つみたてNISAやiDeCoの普及もあり、積立投資をはじめる人が増えています。積立投資とは、一定のサイクルで、投資信託など投資商品の買い付けをする方法のことです。あらかじめ自分で積立金額や積み立てのペースを設定しておけば、自動的に買い付けできるので、日々の値動きに一喜一憂することがあまりありません。無理なく投資を継続できるため、長期の資産形成にとても向いている方法と言えるでしょう。メリットがある積立投資ですが、積み立ての終盤になって、「こんなハズじゃなかった」と肩をがっくり落とす可能性があることはご存知ですか?メリットだけでなく注意点も知って、積立投資を資産形成に上手に役立てましょう。
積立投資の3つのメリットとは
<メリット1:まとまった資金が必要ない>
積立投資は少額でできるため、まとまった投資資金を準備する必要がありません。ネット証券など最低100円からできる金融機関もあり、無理のない金額で始められます。また、積み立てを自動設定にすれば、都度買い付ける手間がかからず、積立投資を長く続けやすくなります。
<メリット2:買い付けのタイミングに悩まなくて済む>
積立投資は、「毎月」など定期的に買い付けるスタイルです。まとまった資金で一度に買い付ける一括投資では、「株価が下がった時がいいのか」など買い付けのタイミングに悩むものですが、今月も、来月も、再来月も…と継続して買い付けできる積立投資であれば、タイミングに悩むことがありません。
<メリット3:ドルコスト平均法の効果が期待できる>
「ドルコスト平均法」とは、値動きのある株式や投資信託などを、常に一定の金額で定期的に買い付ける手法のことを指します。ドルコスト平均法で積み立てすると、価格が高い時に買い付ける量は少なくなる一方で、価格が低い時に買い付ける量は多くなります。このことはどのような効果を生むのでしょうか。
投資信託で毎月3万円の積立投資をするケースを見てみましょう(1口=1万円とし、手数料などのコストは考慮しません)。
たとえば、ある月の投資信託の価格が1万円の場合、3万円で3口買えます。翌月に1万5000円になれば、2口の買い付けとなります。この2カ月間の平均買い付け価格は、(3万円+3万円)÷5口=1万2000円。一方、投資信託の価格を単純に平均すると、(1万円+1万5000円)÷2=1万2500円となり、平均買い付け価格のほうが低くなりました。このように、ドルコスト平均法で積み立てると、平均買い付け価格を抑える効果が得られます。平均買い付け価格が抑えられると、将来価格が上がった際により大きく増やせるので、よいですよね。
次に、もう少し長い期間で、ドルコスト平均法による積立投資をした場合の効果もみてみましょう。
(小数点第一位未満四捨五入)
この表は、積み立て開始から投資信託の価格が順調に上昇したものの、途中から下落に転じ、安値のまましばらく推移した場合です。積み立て終了の年末に向けて回復するも、積み立て開始の価格までは戻らなかった、というケースを想定しています。
年間の積立投資合計額は36万円。取得できた口数の合計は47.1口。12月の投資信託の価格は9000円で、開始時の1万円より低いままですが、積立投資評価額は「9000円×47.1口=42万3900円」となり「36万円」を上回っていますね。価格が戻らなくても、お金は増やせたのです。
ドルコスト平均法では、価格が安い時にたくさん買い付けできるため、その後の価格の回復により資産を大きく育てられる効果を得られるのです。
知っておきたい積立投資の2つの注意点
さて、このように資産形成に有効な手段と言える積立投資ですが、知っておきたい2つの注意点があります。
① ドルコスト平均法は万能にあらず
ドルコスト平均法にも弱点があります。一括投資した方が資産を大きく増やせることもありますし、いくら買い付け時期を分散させたとしても、資産を大きく減らしてしまうこともあります。ドルコスト平均法が有利に働くケースしか知らないと、まとまった資金が手元にあるにも関わらず積立投資を選択することになるかもしれません。有利に働かないこともあることをぜひ知っておきましょう。
まず、一括投資の方が資産を増やせるのはどういう場合か、お伝えします。
それは、投資対象の価格が順調に上がり続ける場合です。月3万円を1年間積み立てた場合と、1月目に一括で36万円の投資をした場合を比べます。
(小数点第一位未満四捨五入)
この例では、価格がずっと上がり続けており、積立投資で買い付けられた口数より、一括投資で買い付けた口数の方が多くなりました。その結果、1年後の評価額は、積立投資は2万1000円×24.5口=51万4500円であるのに対し、一括投資は2万1000円×36口=75万6000円と大きな差が開いてしまったのです。
このような価格上昇局面では、結果的に一括投資の方が資産を増やせることもあることを知っておきましょう。とはいえ、積立投資でも投資額は36万円から51万4500円に増えています。値上がりすることが予想される投資対象の場合、まとめて投資できる余剰資金があれば一括投資を検討しても良いですし、一括投資と比べ成果が見劣りする可能性を知った上で、積立投資を選ぶのも良いでしょう。
次に、積立投資で買い付け時期を分散しても、資産が大きく減ってしまったケースを見てみましょう。積立開始時から投資対象の価格が下がり続け、終盤まで回復しなかった場合です。
(小数点第一位未満四捨五入)
ずっと価格が下がり続けたため、たくさんの口数を取得できてはいます。しかし結果として、評価額は4500円×52.9口=23万8050円となり、資産は36万円から大きく減ってしまいました。
価格が下がっても資産を増やすことができた前述のケースと違うのは、積み立て中に下がった価格が回復せずに下がり続けていること。価格が回復しない場合は、ドルコスト平均法の効果が得られない場合があることを知っておきましょう。
買い付け時期の分散ができるといっても、長い目で見て、成長が期待できる(と思える)資産を選ぶことが、積立投資でもやっぱり大切なのです。
② 積立投資の後半は価格変動に気を配るべし
さて、積み立ての終盤になると、資産額はかなり大きくなります。毎月3万円を20年間積み立てた場合、総額は720万円にもなるのです。コツコツ積み立てた資産が、いつの間にか保有する金融資産の多くを占めているかもしれません。
リスクのある商品での積み立てですから、終盤で大きな価格変動も起こり得ます。積立期間の後半になったら資産の価格に気を配り、売却の時期をどうするか検討を始めましょう。
積み立て投資のゴールに正解はありません。あくまで参考例ではありますが、積み立て資産の売却時期や方法について、2つのケースで考えてみました。
<順調に資産が増えているケース>
使う目的が明確ならば、使う数年前から少しずつ売却してしまうのもアリ。少しずつ現金化することで、その後の思わぬ相場の下落から資金を守れます。使わない分については、運用を継続し、さらに資産が育つ可能性に期待するのも良いですね。
しばらく資産を使う予定がない場合でも、増えた資産に満足でこれ以上減らしたくないなら、使う時期にとらわれず現金化するのも悪くありません。利益を確定することで、使える金額が明確になり、資金計画も立てやすくなるでしょう。
<積み立て期間の後半に暴落が重なったケース>
積み立て期間の後半に、大きな相場の下落に見舞われ、資産評価額が減ってしまうこともあり得ます。この場合は、その時必要な分のみ売却し、残りは積み立てを続け、回復を待つのが良いでしょう。ただし、投資対象によっては必ずしも回復するとは限らないため、引き続き価格変動に注目していきましょう。
買い付けタイミングに悩まず、まとまった資金の必要がない積立投資は、誰にでも始めやすい身近な投資法です。税制優遇がある「つみたてNISA」「iDeCo」も活用し、積立投資を上手に資産形成に役立てましょう。
(みらい女性倶楽部 冨田仁美)