教養・歴史書評

紙、電子ともに雑誌売り上げは危機=永江 朗

紙、電子ともに雑誌は危機

 全国出版協会・出版科学研究所の発表によると、2021年の出版物推定販売金額は、紙と電子を合わせて1兆6742億円。前年比3・6%増となった。なかでも紙の書籍は前年比2・1%増の6804億円で、06年以来15年ぶりのプラス。このことは一般の新聞やテレビのニュースでも取り上げられた。

 もっとも、これをもって市場縮小に歯止めがかかったと判断するのは早計だろう。前年の20年はコロナ禍の影響であまりにも特殊な1年だったからだ。

 21年の1年間も前半と後半では状況が違う。前半は好調で、それは“巣ごもり需要”が続いたからだと思われるが、後半になると感染状況がやや落ち着いたことや、人々の慣れもあって特需は消失。「むしろ19年以前よりも厳しい」という声が規模の小さな書店から聞こえてくるようになった。

 大型書店はもともと売り上げに占める書籍の割合が高いが、中小零細店は雑誌が主力。その紙の雑誌の推定販売金額は21年も縮小を続け、前年比5・4%減の5276億円だった。ピークだった1997年(1兆5644億円)の3分の1である。書籍市場が微増したといっても、小さな書店にとっては焼け石に水だ。

 出版物推定販売金額が伸長した原動力はいうまでもなく電子出版である。コミック、書籍、雑誌を合わせて4662億円で、前年比18・6%増。対前年増減率は19年の23・9%増、20年の28・0%増には及ばないものの、拡大が続いている。電子コミックは前年比20・3%増と拡大を続け、電子書籍も同12・0%増と広がり続けている。

 ただし電子雑誌は前年比10・1%減の99億円で4年連続のマイナス。読み放題サービスの会員減が続いているためだが、紙、電子ともに雑誌というメディアが市場縮小を続けていることに注目すべきだろう。

 先ごろ講談社は女性ファッション・ライフスタイル誌の『with(ウィズ)』の適時刊行化と同ブランドのウェブの強化を発表した。事実上、紙版の休刊でウェブへの移行である。雑誌の可能性はウェブにしかないのだろうか。雑誌というメディアの存在意義が問われている。


 この欄は「海外出版事情」と隔週で掲載します。

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