映画 ナイル殺人事件 俗な話を癖の強い役者に委ねる 「オリエント急行」よりも面白い=芝山幹郎
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ケネス・ブラナーが、またもやアガサ・クリスティの古典に挑んだ。前作は「オリエント急行殺人事件」(2017年)で、今度の新作は「ナイル殺人事件」だ。どちらも監督と主演を兼ねる密室殺人劇で、前者は特別列車、後者は豪華なクルーズ船が舞台となる。
結論からいうと、「ナイル」は「オリエント急行」よりも上出来だった。前作に覗いた無駄な重々しさが抜け、俗っぽい話を癖の強い役者群に委ねている。
冒頭で描かれるのは、第一次大戦に従軍しているエルキュール・ポアロ(ケネス・ブラナー)の姿だ。彼は天性の推理力で味方を救うが、その代償として口もとに深い傷を負う。前作で多くの観客を唖然(あぜん)とさせた「巨大な口ひげ」は、傷跡を隠すためのものだったのだ。ブラナー当人も、批判に対する言い訳を考えていたのではないか。
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週刊エコノミスト
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