教養・歴史書評

電子版の普及でマンガ以外の分野も「コミック化」が進む=永江朗

さらに勢い増す「コミック化」の波

 出版科学研究所(公益社団法人全国出版協会)の発表によると、2021年のコミック市場(紙+電子)は前年比10.3%増の6759億円だった。出版市場全体におけるシェア率は40.4%となり、初めて4割を超えた。ちなみに11年は3903億円でシェアは21.7%。コミックのシェアは10年間で倍近くに拡大した。

 1995年のコミック市場は5864億円で、シェアは22.6%だった。ただし電子はまだなく、紙の雑誌(コミック誌)と書籍(コミックス)の合計である。当時はコミック誌の販売額がコミックスの倍近くあった。その後、コミック誌は縮小の一途をたどり、コミックスは比較的安定。05年にはコミックスの販売額がコミック誌を抜いた。

 そして電子コミックが登場する。11年の電子コミック市場規模はわずか492億円にすぎなかったが(インプレスR&Dの調査)、10年後の21年には4114億円にまで成長した。コミック市場の6割を電子が占める。なお、出版科学研究所が電子も含めて発表するようになったのは14年のデータから。

 統計ではコミックのシェアは4割だが、書店の棚を眺めると「コミック・エッセー」や古典文学のコミック化、コミック版学習参考書など、さまざまな分野でコミック的なものが増えていることに気づく。世界的ベストセラーになった『サピエンス全史』(ユヴァル・ノア・ハラリ著、河出書房新社)のコミック版も売れ行き好調だ。これらのものも含めるとコミックのシェアはもっと高いだろう。

 小学館や集英社、講談社、KADOKAWAなどコミックに強い出版社は高い利益を上げている。文藝春秋や光文社、マガジンハウスなどは専門の編集部門を設置し、コミックに本格参入しようとしている。

 かつて白夜書房の営業マンだった藤脇邦夫は、『出版幻想論』(1994年、太田出版)において「これからはマンガが一般書になる」と言った。既述のようにその後、コミック市場は縮小傾向に入ったが、電子コミックの登場によって状況は変わった。藤脇の予言は四半世紀を過ぎて現実のものになった。


 この欄は「海外出版事情」と隔週で掲載します。

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