江戸中期の私生児めぐる実在事件を題材に、花形三人が初演・共演=小玉祥子
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舞台 四月大歌舞伎 天一坊大岡政談 将軍吉宗の落胤を題材に花形三人が初演・共演
八代将軍徳川吉宗の子であると名乗った人物をめぐる騒動の「天一坊事件」を題材にした歌舞伎「天一坊大岡政談」が東京・歌舞伎座の「四月大歌舞伎」第一部で、尾上松緑、市川猿之助、片岡愛之助らにより上演中だ。
天一坊は実在の人物で詳細は不明ながら享保14(1729)年に死罪となった。事件を扱った講談に河竹黙阿弥が脚色を加え、明治8(1875)年に東京・新富座で五代尾上菊五郎の天一坊、五代坂東彦三郎の大岡越前守、初代市川左團次の山内伊賀亮(やまのうちいがのすけ)という明治の名優により初演されて評判を取った。実説では天一坊事件に関与していない大岡越前守をからめたのは講談の創作である。
紀州(和歌山県)の修験者感応院のもとで小坊主として働く法澤(ほうたく)は、料理と酒を持って一人暮らしのお三(さん)の家を訪れる。気を許したお三は身の上話の中で、自分の娘が奉公先の紀州徳川家で、若き日の吉宗の手がつき、子を身ごもり、後日の証拠にと吉宗のお墨付きと短刀を受け取ったこと、だが母子ともに亡くなったことを語る。証拠の二品を見せられた法澤は、お三を殺害して奪い、自分が死んだと偽装して紀州を出…
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週刊エコノミスト
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