教養・歴史書評

配本の偏りや返品率改善などを目指し、新会社がスタート=永江朗

永江朗の出版業界事情 配本最適化へ新会社スタート

 昨年の5月、大手出版社3社と丸紅が出版流通改革のために新会社設立に向けて協議を開始、というニュースが出版業界に衝撃を与えた。講談社、集英社、小学館が、日本出版販売やトーハンなど既存の取次業者から離れて、自前の流通システムを構築するのではないか、と受け取る向きもあった。

 このほど、ようやくその全貌が明らかになった。丸紅と丸紅フォレストリンクス、講談社、集英社、小学館が3月11日に設立した新会社「PubteX」(パブテックス)である。丸紅の情報・不動産本部本部長付部長だった永井直彦氏が代表取締役社長に、小学館専務の相賀信宏氏が取締役会長に就く。出資比率は丸紅が34.8%、丸紅フォレストリンクス、講談社、集英社、小学館はそれぞれ16.3%とある。

「出版流通をサステナブル(持続可能)なものに改革することを目的とした新会社設立について」と題されたニュースリリース(3月24日付)によると、新会社で行う事業は二つ。一つはAI(人工知能)などを活用して出版物の発行・配本を最適化する事業。もう一つはRFID(ICタグ)を活用した事業。ICタグを出版物に装着して、在庫や販売条件の管理、棚卸しの効率化、万引き防止などに使うという。

 AIによる発行・配本最適化サービスは23年4月から段階的に、またRFIDソリューション事業は23年7月から、それぞれ開始することを目標にしている。この夏には、東京・内神田のパブテックス本社内にRFIDのショールームも開設予定だ。

 ICタグで思い出すのは、東京・神保町で2005~17年に営業していた書店「ブックハウス神保町」だ。同店は小学館系の倉庫・物流会社、昭和図書の経営で、ICタグの利活用も実験的に行われていた。パブテックスではその成果を踏まえて全国の書店で実施するということか。

 コミックやライトノベルなど人気商品の配本に対する書店の不満は大きい。AIの活用によって配本の偏りによる販売機会喪失をどこまで減らせるか、返品率がどこまで改善するのかが注目される。うまく発展すれば、書店の業務や店頭風景が大きく変わる可能性がある。


 この欄は「海外出版事情」と隔週で掲載します。

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