かつて存在した誇り高き放浪の民 新鋭監督が初の長編劇映画で挑戦=寺脇研
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映画 山歌(サンカ) かつて存在した誇り高き放浪の民 新鋭監督が初の長編劇映画で挑戦
昔、この国には「サンカ」と呼ばれる人たちがいた。主に本州の山地を根城にしていた放浪民の集団である。実在していたのは確実なのだが、詳しい生活実態や彼らが何故そんな生活をしていたのかは、わからないままだという。ただ、それは自活しつつの「放浪」であって、経済的困窮ゆえの「浮浪」とは明らかに違ったらしい。山の自然の中に生まれ、生き、死ぬ。自然と共に暮らす生活者、というところだろうか。
明治期には全国で約20万人、昭和に入っても終戦直後に約1万人いたと推定されているこの集団を扱った映画は、1985年に、萩原健一主演で時代設定は戦前の「瀬降り物語」(中島貞夫監督)があるだけだ。昭和末期のこの時点ですら既に謎の存在となっていたサンカの世界にこの度挑んだのは、86年生まれで30代の笹谷遼平監督である。
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