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EVで巡る日本のSDGs最前線⑤アウディの最新EVに試乗、646馬力の「排ガスゼロ」スポーツカーで真庭市蒜山高原と森林地帯を走る

アウディのEVでSDGs先進市真庭市を巡った(アウディジャパン提供)
アウディのEVでSDGs先進市真庭市を巡った(アウディジャパン提供)

 国連の提唱する「持続可能な成長目標」の実現に取り組む自治体を訪問するのに、走行時の地球温暖化ガス排出がゼロのEV(電気自動車)は適任だろう。真庭市はこれから紹介するように観光資源も豊富だ。空気の清涼な蒜山高原や森林地帯を、排ガスの心配をせずにドライブできるのは、一種の理想ではないか。

 今回のツアーで、私が乗ったのは、①e-tron Sportback 55 quattro、②e-tron GT quattro、③RS e-tron GT――の3車種だ。

鮮やかなブルーのスポーティーなSUV

 ①の55は、全長4900㎜×全幅1935㎜×全高1615㎜、ホイールベース2930㎜のSUVである。4月13日のツアー初日、岡山桃太郎空港に到着後、駐車場でキーを借りた。ボディ色は鮮やかなブルーで、背中部分が斜めにスラントしたスポーティーな車だ。乗り込んでみるとドイツの高級車らしく、ピアノブラックのパネルやアルカンターラの内張が張られ、隙のない造りだ。速度などのメーター、ナビ、エアコンの操作パネルは全て液晶。ナビ画面が速度メーターの部分に表示できるのは便利だ。ドアミラーは液晶表示。従来のドアミラーの部分にカメラのついた細いバーがついていて、外の様子はドアの内側にある液晶画面で確認する。慣れないと、つい、ドア外のバーを眺めることになり、少々面食らう。ハーフレザーの電動シートは大柄で座り心地は良い。

e-tron Sportback S5 quattroは重心が低く、カーブでも安定(手前、アウディジャパン提供)
e-tron Sportback S5 quattroは重心が低く、カーブでも安定(手前、アウディジャパン提供)

極太のトルクで出足はスムーズ

 駆動方式は4輪駆動、最高出力300kw(408ps)、最大トルクは664Nm(67.7kgm)と信じられないほど高出力だ。車重は2560kgもあるので出足はどうかと思ったが、極太のトルクのおかげで、スルスルと走り出す。搭載のリチウムイオン電池の容量は95kw時、航続距離はWLTCモードで405km。最小回転半径は5.7mだ。

 飛行場を出発し、しばらく田舎の一般道を走る。下り坂だが、ハンドルの脇にあるパドルシフトを操作すると回生ブレーキの強さを調整できる。エンジンブレーキと同じ効果があり、下り坂でもあまりブレーキを踏まなくても済む。大柄のボディにもかかわらず、きついカーブも難なくクリアした。途中から高速に乗ったが、80~100㌔の最高速度では、全く平穏である。先行車追従、車線維持機能はハンドル左下のレバーで操作する。米子道は、途中で片側1車線の対面通行の場所があるが、その厳しい条件でもきちんと機能した。

高速での前車追従、車線維持機能も正確だった(アウディジャパン提供)
高速での前車追従、車線維持機能も正確だった(アウディジャパン提供)

4輪操舵で最小回転半径は5.2m

 ②e-tron GT quattro(以下GT)と③RS e-tron GT(以下RS)はEVのスポーツカーだ。基本的なボディの形状は一緒で、後者の方がエンジンの出力が高い。全長は4990㎜、全幅1965㎜、ホイールベースは2900㎜と一緒で、全高はGTが1415㎜に対しRSは1395㎜と低い。駆動方式は二つとも4輪駆動。最高出力、トルクはGTが390kw(530ps)、640Nm(65.3kgm)、RSが475kw(646ps)、830Nm(84.7kgm)。

 また、RSは4輪操舵方式で、後輪も曲がる。そのため、最小回転半径はGTが5.5mに対し、RSが5.2mと小回りがかなり効く。

 この2車の試乗はツアー2日目で、あいにく朝から強い雨が降っていた。これだけ高出力の車で、重さはGTが2280kgとRSが2320kgと2㌧を超える。そのため、雨中の走行はかなり緊張したが、こちらも、何の苦も無くしずしずと走り出した。高速では、急加速を何回か試みた。矢のように加速するが、濡れた路面に足をとられて不安定な挙動を示す場面は一度もなかった。搭載するリチウムイオンバッテリーは、2車とも93.4kw時で、航続距離はWLTCで534kmだ。

湯原温泉「八景」とRS e-tron GT(手前、アウディジャパン提供)
湯原温泉「八景」とRS e-tron GT(手前、アウディジャパン提供)

スピーカーで疑似エンジン音を発生

 EVなので、もちろん、エンジン音はしない。しかし、こうした高級車を買う富裕層の中には、刺激的なエンジン音を求める人も少なくないのだろう。人工的にスピーカーから「ボボボボ」と疑似エンジン音を生成する装置がついており、大排気量のスポーツカーに乗っている気分にはなった。しかし、私はむしろ、エンジン音は無い方が、自然との共生を感じられ、良いと思う。GTとRSは純スポーツカーの風貌にもかかわらずドアが四つついている。SUVに比べさすがに天井は低いが、後席には大人が二人無理なく座れるのも美点だ。

 問題は価格である。①のe-tron Sportback 55は「1st editon」という電子ミラーなどがついた特別仕様車で価格は1346万円(消費税込み)、②のGTはオプション込みで1580万円(同)、③のRSはオプション込みで2640万円(同)だ。EVの普及を通じて、日本社会の持続可能な成長を実現にするには、かなりハードルの高い価格設定である。

試乗したe-tron GT quattro(左、アウディジャパン提供)
試乗したe-tron GT quattro(左、アウディジャパン提供)

今秋発売の戦略SUV「Q4 e-tron」は599万円から

 そこで、アウディはこの秋に戦略SUV Q4 e-tronを発売する。後輪駆動で価格は599万円からだ。全長4588mm×全幅1865mm×全高1632㎜。リチウムイオン電池の容量は82kw時で、航続可能距離は500km以上と予定されている。東京都に住んでいれば、国と都の補助金を合わせ、実質500万円程度(諸経費含まず)で買うことは可能だ。テスラのモデル3のベースモデル(後輪駆動で579万円)と比べても十分に価格競争力はある。

米子道をEVで高速走行(アウディジャパン提供)
米子道をEVで高速走行(アウディジャパン提供)

ベースグレードの色の選択肢拡大を

 ただし、この599万円のモデルは「受注生産」で色も地味な1色(ペブルグレー)しか設定がない。これでは、実際には顧客の購入リストから外れることになる。一つグレードが上のモデルはいきなり価格が662万円に跳ね上がる。アウディジャパンはクロスファンクショナルチーム「e-tronX」を作ってEVの普及を進めるのだから、ここは是非もう少し頑張って、599万円のベースグレードで白、黒、ブルーなど3色くらいから選べるようにして欲しいところだ。

 最後にアウディジャパンが制作した今回のツアーのビデオのリンクをお知らせしておく。「ゼロエミッション」の車で真庭の大自然や古い市街地を走るのが、いかに、気持ちが良いか、体感いただけるだろう。

(稲留正英・編集部)

(⑥に続く)

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