コミックが突然の連載打ち切り。今後の詳細な説明を求めたい=永江朗
「宗教2世」作の漫画が突然の連載打ち切り
集英社があるコミックの連載を打ち切ったことが、出版界やコミックファンの間で波紋を広げている。
その作品は菊池真理子の『「神様」のいる家で育ちました 宗教2世な私たち』。ウェブメディア「よみタイ」で連載されていた。
まず、1月26日に公開された第5話について、「よみタイ」編集部が2月10日付で「お詫(わ)びとお知らせ」を発表。それによると〈本作品は、「宗教2世」が「親との関係」において抱える苦悩について問題提起することを目的としていましたが、第5話についてはあたかも教団・教義の反社会性が主人公の苦悩の元凶であるかのような描き方をしている箇所がありました〉と公開終了の理由について説明している。
しかし、それから1カ月あまりたった3月17日付で、同編集部は第5話の公開だけでなく連載そのものを終了することを発表した。そこには〈本来、制作段階にて編集部が行うべき事実確認や表現の検討が十分ではない箇所がございました〉とある。
これだけでは具体的に何がどう問題だったのか分からない。「教団・教義の反社会性」とは何なのか。取り上げられた宗教団体から事実に反するという指摘や抗議があったのかどうかも不明だ。お詫びと訂正ではなく、連載も公開も終了という重い措置に至ったのはなぜなのか。
筆者がこのニュースを知ったのは3月22日配信の共同通信の記事によって。その時、思わず1989年に起きた「TBSビデオ問題」を連想した。TBSがオウム真理教からの圧力に屈して取材ビデオを見せ、それが坂本弁護士一家殺害事件につながった。
また、宗教団体と出版社のトラブルでは、91年に起きた講談社と幸福の科学の争いも思い出される。講談社が『フライデー』や『週刊現代』で幸福の科学を批判し、それに対して教団側がデモや大量の電話・ファクス送信などによる抗議行動を行った。双方が訴訟を起こし、記事の違法性が認定されるとともに、抗議行動の違法性も認定された。
万が一、今回の集英社の対応が宗教団体の圧力に屈したということならば問題は大きい。ことの詳細を同社は明らかにすべきではないか。
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