週刊エコノミスト OnlineゼロコストでPR SNS活用術

プレスリリースにはニュース価値が欠かせない

プレスリリースは社会問題解決がカギ=笹木郁乃/21 

 プレスリリースは誰でも書くことができるし、フォーマットも決まったものはない。だからこそ、書くためには“コツ”が必要になる。

 プレスリリースに絶対に欠かせない要素は「社会の現状(社会問題)」というフィルターだ。自社の商品やサービスが、社会の現状にどのように関わっているかを必ず理解できるようにする。プレスリリースは会社の宣伝ではない。ニュースとして伝える価値のある情報と感じられなければ、わざわざ取材に来てくれない。

 では、プレスリリースの具体的な書き方はどうすればいいのか。まずは伝える情報の順番(整理する)を上げる。

 最初は、(1)今回のお知らせの概要だ。プレスリリースはニュースとしての価値が必要であるため、「新発売」という新規情報の場合はいいが、「このペンは5年前に発売した」では到底、取り上げられることはない。そのため、「発売5年を記念して、こんなイベントを開催します」など、何らかの新規情報を用意する必要がある。

 次に、(2)社会の現状を伝え、(3)現状を受けてあなたの思いと今回やることを書く。例えば、「コロナ禍で〇%の人が運動不足で体重が増加している現状がある」という事実を伝え、「これを解決するために、ステイホームで困っている人の助けとなる、座ったままできるトレーニングを開発した」という具合だ。ここがポイントとなる。

 そして、(4)過去のストーリーを入れる。例えば、開発秘話や今に至る苦労話などだ。これはPR設計の「ストーリー」と同じだ。

取材意欲をそそる

 ここから、「未来」に向けて話を展開する。まずは(5)決意だ。例えば、「このトレーニングで体重が減少し、不調の人が減ることで健康寿命向上に寄与したい」と、会社が目指すビジョン、社会にどう貢献したいかを説明する。

 そして、記者会見やイベントの告知など、(6)催し日時の案内につなげる。新商品発表のリリースも、発売日の告知だけではなく、記者向けの体験会などをセットで案内するのがお勧めだ。具体的に、いつ、どこに行けば取材ができるかが分かるようにしよう。

 最後に、(7)取材のお願いを書き添える。単に「取材依頼」というよりは、未来への意気込みを絡め、社会的な意義を訴えることで、記者も取材意欲がそそられる。

 プレスリリースの流れのなかで、最もメディア関係者が興味を持つポイントとなるのが(2)である。つまり、「社会の現状」に対する問題定義を書き、「それを解決するためにこの商品を開発しました、このサービスを始めます」と書くことで単なる宣伝ではなく、社会問題解決のための情報と捉えられるようになる。また、その際には数字で表せる客観的データがあると信ぴょう性も高まる。ぜひ「社会の現状」を意識してリリースを書いてほしい。

(笹木郁乃・LITA代表)


 ■人物略歴

ささき・いくの

 1983年生まれ。山形大学工学部卒業後、アイシン精機に入社(研究開発に従事)。その後、寝具メーカー・エアウィーヴに正社員1号として入社。売上高を5年で1億円から115億円の急成長へ貢献。鍋ブランド・バーミキュラの広報を経て、2017年から現職。著書に『0(ゼロ)円PR』など。

インタビュー

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事