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経済・企業 挑戦者2022

コロナ禍を機に新型開発 飛散防ぐ吸引式ドライヤー

撮影 武市公孝
撮影 武市公孝

浅見潤 エアラボ代表取締役

 水滴や雑菌を吸収して手を乾かすことができる吸引式ハンドドライヤー。新型コロナウイルス禍で注目を浴び、販売が拡大している。

(聞き手=加藤結花・編集部)(挑戦者2022)

唯一の吸引式ハンドドライヤー

 風で水滴を吸引して手を乾かす吸引式ハンドドライヤーを開発・製造販売しています。吸引することで周囲に水滴や雑菌を含んだ空気が飛散しにくいのが特徴で、粒子飛散を99.7%防ぐことができます。

 吸引式のハンドドライヤー自体は20年以上前からありましたが、主として食品工場や製薬会社、精密機器メーカーの工場などプロフェッショナルな現場で使用されているのみで、一般の人が利用する機会はありませんでした。製造していたのはタイズ社という会社(現在は事業終了)で、オフィスや商業施設のトイレに設置できる小型の吸引式ハンドドライヤーを販売したいと考えていましたが、経営難などもあり、その事業を引き継いで吸引式製品を開発販売しようと2014年、新しく設立したのがエアラボです。

 吸引式の製品は元からあったため、「簡単にできるだろう」と思っていましたが、それは間違いでした。17年にオリジナル第1弾「クレナ」という製品を開発して販売しましたが、満足のいく吸引力や風力を確保できませんでした。筐体(きょうたい)の小型化、材質の変更などに十分に対応できなかったのが原因です。細々と売れたものの、性能に納得できない部分もあり、事業について自信を失っていきました。

 潮目が変わったのが、新型コロナの流行でした。吸引式のドライヤーが衛生的だと評判になり、大手不動産デベロッパーなどからまとまった注文が入るようになりました。そこで、第2弾のオリジナル製品の開発に着手しました。技術者らに助言をもらいながら、吸引力や風力などを改善。清掃員の声も反映しながら、パネルを取り外ししやすくしたり、溝などを減らして掃除がしやすいデザインにするなど工夫しました。

 改良した「サーキュラ」は昨年11月、米国で開催される世界最大級の家電IT見本市「CES」の「2022イノベーションアワード」を受賞。今秋にオープンする複合施設「九段会館テラス」(東京都千代田区)に47台、物流施設の三井不動産ロジスティクスパーク市川塩浜Ⅱ(千葉県市川市)にも8台導入されるなど、注文も順調に伸びています。

ものづくりへの憧れ

 社会人になってから、興銀リース(現みずほリース)やソフトバンク・ファイナンス(現SBIグループ)で投資などに関連する仕事をし、ベンチャー企業の目利きもしていました。ただ、子どものころからバイクや車、プラモデルなどが好きで、ものづくりに興味がありました。日本が世界に誇れるものづくりをしたいと考えていた時に出会ったのが吸引式ハンドドライヤーで、この技術で勝負したいと自己資金などで起業しました。

 サーキュラの実勢取引価格は約30万円で、一般的な従来式と比べて同等かやや高い程度。コロナ禍が収まった後も、高まった公衆衛生の意識は続いていくと思うので、より衛生的な私たちの製品が広まっていく可能性を感じています。


企業概要

事業内容:吸引式ハンドドライヤーの研究開発及び製造販売

本社所在地:東京都千代田区

設立:2014年10月

資本金:4000万円(資本準備金含む)

従業員数:5人(アルバイト含む)


 ■人物略歴

あさみ・じゅん

 1966年埼玉県生まれ。早稲田大学卒。91年興銀リース(現みずほリース)入社。ソフトバンク・ファイナンス(現SBIグループ)などを経て、2014年にエアラボを設立。21年12月に発売した吸引式ハンドドライヤー「CIRCULA(サーキュラ)」は、世界最大級の家電IT見本市「CES」で2022イノベーションアワードを受賞。

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