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週刊エコノミスト Online ロングインタビュー情熱人

日本サッカー史の一端に関われて光栄 清水エスパルス・アカデミーヘッドオブコーチング、森岡隆三さん

「自叙伝は気づいたら400㌻を超えていて、削る作業が大変でした」 撮影=佐々木 龍
「自叙伝は気づいたら400㌻を超えていて、削る作業が大変でした」 撮影=佐々木 龍

日韓W杯の「記憶」

森岡隆三 清水エスパルス・アカデミーヘッドオブコーチング/39

 あれから20年──。日本を熱狂と興奮の渦に巻き込んだ「トルシエ・ジャパン」のキャプテン、森岡隆三さんが当時の思いなどを振り返る著書を刊行した。さまざまな経験を糧にして今、次世代の育成に力を注ぐ。

(聞き手=元川悦子・ライター)>>>ロングインタビュー「情熱人」はこちら

── 今年6月9日に自叙伝『すべての瞬間を生きる PLAY EVERY MOMENT』(徳間書店)を出しました。キャプテンを務めた2002年のサッカー・ワールドカップ(W杯)日韓大会で、グループリーグ2戦目に1対0でロシアにW杯初勝利したのと同じ日です。

森岡 「自身のリアルな体験をその時の感情を踏まえて書いてほしい」と出版社から依頼を受け、どうするか悩みました。日韓W杯から20年という節目に人生を振り返る作業は意味のあることだと思い、記憶をたどる旅はなかなか大変でしたが、苦しかった当時の思い出が懐かしく感じられ、ちょっとしたタイムスリップでしたね。気付けば400ページを超える分量になっていて(刊行した自叙伝は334ページ)、むしろ削る作業が大変でした(笑)。

── 森岡さんのサッカー人生といえば、やはり日韓W杯の代表をフランス人のフィリップ・トルシエ監督が率いた「トルシエ・ジャパン」(1998~02年)時代が印象的です。

森岡 代表デビューは99年3月のブラジル戦で、旧国立競技場に5万3000人超の大観衆が集まる中、(歌手の)徳永英明さんが歌った国歌をベンチ前で聞いた時に鳥肌が立ったことはよく覚えています。自分の出番は後半18分から。3人のディフェンダー(DF)の中央に入ってプレーしました。DF3人が細かく最終ラインを上げ下げする「フラット3」という戦術を志向するトルシエ監督との付き合いはこれが始まりでした。

── 森岡さんと宮本恒靖さん(現日本サッカー協会理事)、松田直樹さん(故人)、中田浩二さん(現鹿島クラブ・リレーションズ・オフィサー)の4人は、フラット3の申し子的存在でしたね。

森岡 高さや強さよりも相手との駆け引きや判断力、臨機応変さを求めたトルシエ監督でなければ、僕は代表に呼ばれていなかったと思います。クレバーさや予測という能力を、清水のアルディレス、ぺリマン両監督の下で磨けたのも後押ししてくれました。00年のシドニー五輪では、私はメンバーが選ばれるU─23(23歳以下)ではなかったのですが、オーバーエージ枠3人の一人に選ばれ、ヒデ(中田英寿さん)やツネ(宮本さん)たちと一緒に8強入りを経験できました。直後のレバノンでのアジアカップでも優勝し、自信を付けさせてもらえたのも大きく、トルシエ監督も信頼を深めてくれたのかなと思います。

左足裏に走った激痛

── ところが、待ちに待った日韓W杯の本番、スタメンで出場した6月4日の初戦・ベルギー戦ではアクシデントに襲われました。

森岡 当日の埼玉スタジアム2002は、スタンドが青一面に染まり、感じたことのない熱気に包まれていました。私自身も少し緊張感があったのか、(小野)伸二(現札幌)からのスローインを受けてボールを逆サイドに蹴ろうとしたら、ミスキックになりました。「今日は硬いな。緊張しているんだな」と思ったくらいです。試合は1点を先行された後、鈴木隆行(現解説者)とイナ(稲本潤一=現南葛SC)のゴールで逆転したのですが、その矢先に左足裏に激痛が走りました。自分からピッチに腰を落としてなんとか治療できないかとドクター、トレーナーにも診てもらいましたが、結局そこで交代。私のプレーヤーとしてのW杯はそのまま終わりを告げました。

 20年前はW杯本大会で勝つことすら高いハードルだった日本代表。欧州でプレーしていたのも中田英寿、小野伸二選手ら数人だけ。しかし、日韓大会ではベ…

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