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週刊エコノミスト Online ロングインタビュー情熱人

“ブラック企業”をなくせ! NPO理事長、飯塚盛康さん

「過労死遺児の子どもたちとは、一緒に遊ぶことが大事なんです」 撮影=蘆田剛
「過労死遺児の子どもたちとは、一緒に遊ぶことが大事なんです」 撮影=蘆田剛

飯塚盛康 NPO法人「ディーセント・ワークへの扉」理事長/41

 過労死や過労自殺が後を絶たないニッポン。経済産業省を退職し、“ブラック”企業を“ホワイト”にする活動に取り組んでいるのが飯塚盛康さんだ。その視線は若手の退職が相次ぐ古巣の霞が関にも向いている。

(聞き手=大宮知信・ジャーナリスト)>>>これまでのロングインタビュー「情熱人」はこちら

「1社でも2社でも“本当にいい会社”に変えたい」

── 「働き方改革」が盛んに叫ばれるようになりましたが、残業代の未払いや長時間労働による過労死、パワハラが原因の自殺などが一向になくなりません。

飯塚 過労死防止対策推進法(2014年11月施行)ができても全然なくなりませんね。企業側の意識が全然変わっていない。企業経営者にとって利益を上げる手っ取り早い方法は、人件費を削ることなんです。残業代は払わない、長時間労働をさせるのは当たり前、「年休(年次有給休暇)なんてないよ」と平気で言う社長がいっぱいいますからね。

── 理事長を務めるNPO法人「ディーセント・ワークへの扉」(埼玉県深谷市)は、「ブラック企業」の根絶が目的だそうですね。具体的にはどんな活動をしているのですか。

飯塚 社会保険労務士と同じような仕事ですが、ブラック企業で働いている人から話を聞いてアドバイスをしたり救済の方法を考えつつ、その会社に行って社長に「従業員に対して不当な扱いをしていませんか」と聞きながら、社長を説得するんです。公平な目で見てこういうことをやっていると、会社の将来にとっても良くないですよね、と。

── どんな会社が多いのですか。

飯塚 美容室とか理容室、自動車部品の販売会社、建設会社など中小・零細企業ですね。現状を調査して、その会社の働き方や労務管理を見直しませんか、と提案するんですが、経営者はだいたい嫌がります。それでも、従業員の人たちはみんな困っていて、どんどん会社を辞めたりしています。根本的に間違っている社長の考え方、人事・労務管理の見直しを提案し、従業員と社長の考え方が折り合ったところで改善していきます。

── 最初に取り組んだのは埼玉県の美容室だそうですね。

飯塚 商工会議所の会員から「従業員が居つかなくて困っている会員の会社があるから、見てやってくれないか」という話があり、取り組みを始めました。4店舗ある美容室でしたが、どんどん人が辞めていく状態。従業員に対するヒアリングを重ねて、社長に「経営方針を転換した方がいいですよ」と、13年から毎週1回会い、1年間かけて説得しました。

 いきなり残業代を全部払え、と言うと、社長もむくれてしまいます。そこで、まず、従業員の長時間労働を減らすことから始めませんかと提案し、なるべく短い時間で効率よく働くシステムにして、もし残業すれば残業代を払うことにしましょう、と。社長や他の役員の給料も半分にして、休日も世間並みに取ることにするとか、そうした説得の結果、やっと社長の考えが変わっていったんです。

── そのケースはうまくいったのですか。

飯塚 うまくいったんです。離職者が本当にいなくなり、もう手を離しても大丈夫な状況です。この間、社長に会ったら、「おかげさまで、みんな頑張って働いていますよ」と言っていました。ただ、その状態まで持っていくのが大変なんです。途中で嫌になってあきらめてしまう社長も多いんですよ。

 NPOの名称の「ディーセント・ワーク」とは、「働きがいのある人間らしい仕事」のことで、1999年に国際労働機関(ILO)が21世紀のILOの活動目標として掲げた。この考え方に共鳴し、「働き方改革」という言葉が広まる前から、働く環境の改善に取り組んできた飯塚さん。そのきっかけとなったのは、高専を卒業後にノンキャリアの官僚として入った経済産業省時代の危機感だった。

相次いだ自殺がきっかけ

── この問題に取…

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