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週刊エコノミスト Onlineロングインタビュー情熱人

人を治してなんぼです 医師、澤芳樹さん

「ゼロからのことばかりだったけれど、幸運にも支えてくれる人がいて今の僕がいます。人とのつながりは千載一遇にしないといけない」  撮影=平岡 仁
「ゼロからのことばかりだったけれど、幸運にも支えてくれる人がいて今の僕がいます。人とのつながりは千載一遇にしないといけない」  撮影=平岡 仁

澤芳樹 大阪大学名誉教授 心臓血管外科医/42

 再生医療実用化に向け、iPS細胞を使った世界初の心臓手術などを手がけてきた心臓血管外科医の澤芳樹・大阪大名誉教授。「いのち」がテーマの25年大阪・関西万博の立役者の一人でもある。

(聞き手=荒木涼子・編集部)>>>これまでのロングインタビュー「情熱人」はこちら

「50年後も輝いている命という人の営みを万博2025のレガシーに」

── 2025年大阪・関西万博開幕まで1000日を切りました。万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」です。澤先生が実行委員長を務めた、命の大切さをみんなで考え行動することを目指した「inochi未来プロジェクト」と共通項も多いです。

澤 僕ら医療関係者は、人の命を救うことに人生をかけています。患者さんも一生懸命生きようとされている。一方で人を殺す行為、殺人もテロも、戦争もなくなりません。言い方が雑かもしれませんが、人を簡単に殺すなよ、と心の底から思っています。俺らは一生懸命、命を助けているのに、患者さんは頑張ってるのに、いいかげんにしろよ、と。人は簡単に死ぬんだ、と。

 そこで14年、「あした死ぬかもしれない命をどう大切にするのか」を考えてもらおうと、プロジェクトを発足させました。同い年の山田邦雄さん(ロート製薬会長)や、鈴木寛さん(東京大学教授)たちと、産官学民がオープンに議論する場を作ろうと。その中で学生メンバーの中から「命」をテーマにした万博の話が持ち上がり、誘致活動につながりました。

 学生のエネルギーはすごい。誘致活動で、当時京都大学医学部5年生だった川竹絢子さんが山中伸弥先生(京大教授)に先立ち、博覧会国際事務局(BIE)の総会でスピーチしてくれて。その後、誘致が決まりました。

 今回の万博は新しい科学技術を示すというより、人の豊かさや温かさ、命をどう捉えるかということを主眼にしています。命は最も重たい。50年後も輝いている命という人の営みを、万博のレガシーにしたいですね。

── ウクライナ戦争などが起きている今こそ、万博のメッセージは一層重要に感じます。

澤 今の時代、死生観が失われていると感じます。戦争のニュースを見ると、結局、人って進歩しないなというか。シンプルに、許せない、ひどい、などの表現を超えて、人間って残念な生き物だなって、失望しています。世界は一つにつながっています。調和を乱さないよう、みんなで手を取り合ってバランスをとらないといけないのに、今は乱れています。僕の好きな映画の一つ「スター・ウォーズ」でいえば、“フォースの乱れがすごい。シスの暗黒時代到来”=社会が不安定化し、憎悪や恐怖、怒りなどの負の感情があふれた世界=です。ただ、冗談では済まされません。

先手必勝で走り続けた40年

 21年3月末で大阪大学大学院医学系研究科心臓血管外科教授を退官。医局入局以来40年歩んだ心臓外科医の道から、新たなステージに足を踏み出した。

 大学の教員時代は、外科手術において海外から最先端の技術を積極的に取り入れてきた。主任教授に就任した06年、年間300件ほどだった心臓血管外科手術は、同1000件に。心がけたのが、患者の身体(からだ)に負担の少ない「低侵襲の手術」だ。大動脈弁狭窄(きょうさく)症に対するカテーテル治療「TAVI」は、世界では02年に初めて実施されたが、国内としては阪大がいち早く09年に導入。安全性や有効性のデータを積み重ねることで、13年の保険収載につなげた。人工心肺を用いない弁形成術、心肺同時移植など新しい治療法を開拓・導入してきた。

── 教授就任時、「低侵襲の手術」と「重症心不全治療を極める」との目標を立てました。

澤 阪大医学部は日本で最初に人工心肺を使った開胸手術を成功させた施設です。日本をリードしていくことは、患者さんを救う近道です。そこで「10年先…

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