石原莞爾ら陸軍参謀が戦後社会に受け入れられたのはなぜか=井上寿一
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陸軍参謀7人の戦後の軌跡 戦後日本の再建支えた皮肉=井上寿一
日本の8月は戦争の歴史を振り返る月でもある。なぜ日本は戦争に負けたのか。最大の元凶が軍部、なかでも陸軍の参謀だったことは、論をまたないところだろう。彼らのイメージは定着している。自分たちは安全な場所で文字どおり机上の空論の作戦指導を立案する。彼らの無謀な作戦によって、前線の兵士たちは餓死と玉砕の生き地獄をさまよう。
前田啓介『昭和の参謀』(講談社現代新書、1430円)は、このようなイメージの確認にとどまることなく、書名を『参謀たちの戦後』と改めた方がよいくらいに、彼らの戦後の軌跡を追っている。
本書が取り上げている7人の参謀は、いずれ劣らぬ異能の人物ばかりである。
満州事変の首謀者=石原莞爾(いしわらかんじ)は戦後に神格化された。作戦課長などの要職を歴任した服部卓四郎は、戦後の再軍備にかかわった。ノモンハン事件やガダルカナルの戦いを指揮した辻政信は、1952年の衆議院総選挙でトップ当選した。辻の数奇な生涯は、同じ著者の『辻政信の真実』(小学館新書、1210円)がたどっている。瀬島龍三は、シベリア抑留を経て、総合商社の会長にまで上り詰めた。経済参謀で日中戦争不拡大派の池田純久(すみひさ)は、戦後、エチオピア顧問団長を務めた。情報参謀の堀栄三は奈良県の村長に収まった。沖縄戦を指揮した八原博通(やはらひろみち)は身を隠すかのよ…
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週刊エコノミスト
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