教養・歴史書評

西欧中心史観を脱した「世界史」構想にはアジアの史実が不可欠=本村凌二

 しばしば日本人は世界に向けて発信しろと言われる。だが、現実ははなはだ心もとない。海外に出れば、日本語は通用しないし、国際語としての英語で発信しなければならない。数少ない例として、『OKAMOTO Takashi ; ASIA REORIENTED:A New Conception of World History, JPIC 2022』が公刊されている。この英訳書はすでに岡本隆司『世界史序説──アジア史から一望する』(ちくま新書、946円)として刊行されているので、紹介しておきたい。

 なにはともあれ、近現代の思想・学問は西欧を土台として成立しているからには、その枠組みはキリスト教と国民(nation)にあるという。だから、歴史学にあっても、それは「普遍史」であり、西欧の方法で抽象した理論・指標の適用を前提とすべきだという固定観念がある。

 しかし、最近のグローバル・ヒストリーにいたる「世界史」には、世界中の人間社会はみんな同じ、「均質」だという前提が潜んでいる。その手続きこそが西洋中心史観の誤りであり、偏見にすぎないのだ。欧米人の常識には見えにくい史実、解しがたい史料がアジアにはれっきとしてある。だから、アジアを併せて「世界史」を構想するには、アジア史そのものの視角・論理からアジアの史実を踏まえた作業が必要になる。それには、東洋史学を有し東アジア史を学ぶ日本人が最もふさわしい、と著…

残り392文字(全文992文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事