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教養・歴史 書評

紙の商社とコラボした新雑誌が発売2日で増刷=永江朗

 河出書房新社から季刊誌『スピン/spin』が創刊された。紙の雑誌である。このところ雑誌といえば休刊かデジタルへの移行という話題ばかりだったが、久々に創刊のニュースである。流通のための雑誌コードは同社の文芸誌『文藝』の増刊コードを使用。内容は小説やエッセー、コラムなど。創刊号は多くの文芸誌や総合誌と同じA5判で並製・平綴(と)じ。全160ページで税込み330円という驚きの安さだ。

 いくつか特徴がある。まず、これは4年後の2026年に創業140周年を迎える河出書房新社のカウントダウン企画であること。季刊で年に4号、4年間で計16号限定の雑誌なのである。

 また、出版界がなべてデジタル化に向かうなか、あえて紙を選択した。紙の専門商社である株式会社竹尾とコラボレーションしている。創刊号巻末近くの「紙のなまえ」というページには表紙や目次、本文に使った紙の名称や斤量(厚さ)などのデータ、メーカー名、そしてその紙の由来や性質などの解説が記されている。ちなみに表紙は大王製紙の「竹あやGA さらし」。木材パルプに竹のパルプを配合した紙で、〈若竹の柔らかなうぶ毛のような手触りと、青竹の硬さのような紙の張りをあわせ持っています〉とのこと。

「スピン」という雑誌名は作家の恩田陸が命名。英語のspinには「紡ぐ」「回転させる」「長々と話す」などの意味があるが、出版界・製本界では、どこまで読んだのかわかるように本に挟む栞紐(しおりひも)のことをいう。

 創刊号は9月27日の発売前から話題で、初版は当初予定の約3倍にあたる1万部に。ところが予想を超える売れ行きで発売2日目には増刷を決定したという。ただし表紙と目次の紙は初版分だけで在庫が尽きたため、別の紙を使用するという異例の展開となった。


 この欄は「海外出版事情」と隔週で掲載します。

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