週刊エコノミスト Online2022年の経営者

対面営業で手厚いサポート継続 清水博・日本生命保険社長

Photo 武市公孝:東京都千代田区の東京本部で
Photo 武市公孝:東京都千代田区の東京本部で

清水博 日本生命保険社長

Interviewer 秋本裕子(本誌編集長)>>これまでの「2022年の経営者」はこちら

── 新型コロナウイルス感染症や金利上昇で経営にはどのような影響が出ていますか。

清水 就任した4年前と経営環境が大きく変わりました。新型コロナの感染拡大、特にオミクロン株の流行により、医療保険の入院給付金の支払いが膨らみ、影響を受けました。流行初期から「みなし入院」に対応できるよう約款上の定めを広く解釈し、入院したくてもできない自宅療養のお客様に給付金を支払ってきました。

 感染症状が軽症となる中、「みなし入院」のあり方は、政府による患者の全数把握の見直しと合わせ、対象を縮小する取り扱いに変更しましたが、それでも約款の定めを超えての給付を続けます。医療が逼迫(ひっぱく)する中、必要な人に給付金を届ける生命保険会社としての使命、役割を再認識しました。

 新しい契約獲得や支払いの面で業績には厳しい状況が続いています。運用面でも海外の金利上昇で、海外投資に対する為替のヘッジコストが上がり、利益を押し下げる要因になっています。ただしコロナ禍で不安に備えるための保険という認識も広がり、ニーズは引き続き強くあります。

── 新型コロナにより対面営業も難しくなりました。どのような工夫をしていますか。

清水 当社は133年にわたり営業職員を保険営業の中心に置いてきました。お客様の将来への漠然とした不安をどのような保険で保障すべきかを考え、十分な説明でやりとりするのに対面営業に勝るものはありません。また、加入後の長い保障期間に、生活状況の変化に伴って現在の加入状況が最適かなどのアフターフォローも必要です。今後も約5万人の営業職員が中心であり続けます。

 ただ、生活の中でスマートフォンなどデジタル技術を使う機会が増えています。タブレット、スマホ、そして離れていても互いにパソコン画面を共有できるシステムを使い、この3年間、対面とデジタルを組み合わせてきました。経験を積み重ねていきます。

── 保険商品では、4月に「3大疾病3充マル」という新商品を発売しました。その特徴と狙いは。

清水 3大疾病(がん・急性心筋梗塞(こうそく)・脳卒中)は日本人の3大死因で、これらを保障する保険は30年前から販売してきました。この商品は、例えば健康診断の結果などで精密検査が必要となればそのための費用を給付金として支払うというように、早期発見・早期治療に役立つ給付を備えたことが特徴です。最近は仮に病気になっても早めに治療し、無病息災ならぬ一病息災で元気で生きる人も増えています。発売5カ月で契約数35万件と、期待した通り好評です。

一時金でニーズに対応

── 保険商品はどのような流れにあるのですか。

清水 大きく2タイプあり、一つが幅広い疾病をカバーし、入院や手術を保障する一般的な商品、もう一つが特定の病気に重点的に給付する商品です。全般的に保障する商品をまず持った上で、3大疾病や生活習慣病など、重点的に保障したいものを2階部分に加え、病気に十分に備えるのが今後の保険のあり方だと思っています。

── 治療しながら働く人も増え、医療保険の役割も大きいのでは。

清水 一時金での給付が主流になります。人や病気によって、治療の仕方は千差万別です。入院、通院、手術、投薬など治療の流れの中で、一時金を自由に使ってもらうのがよいと考えています。

── 4月に「ニッセイプラス少額短期保険」が営業を始め、グループ5社体制になりました。

清水 2階建て部分の中でより軽度なものに対応したいと考えました。例えば、妊娠・出産などの女性特有のライフスタイルに対応することで、女性活躍という社会課題へのサポートにもなります。

 5社で「日本生命」を中心に据えたとき、「大樹生命」は日本生命同様に営業職員による販売が中心ですが別の商品を扱っており、新しい保障を提供できます。「ニッセイ・ウェルス生命」は競争が激しい銀行窓販に特化、「はなさく生命」は代理店に強みを持ち、乗り合い代理店のマーケットでシェアを広げます。「ニッセイプラス」は損害保険も取り扱う予定で、生保と組み合わせて多様なニーズに応える幅広い商品が作れます。5社それぞれが狙うマーケットで成長することで、グループ全体の存在感を上げていきます。

── 海外戦略はどうでしょう。

清水 アジア太平洋地域を中心に7カ国で展開しています。豪州や東南アジアは当初見込んだほど伸びていないので、引き続き強化し、チャンスがあれば拡大したいですね。ただし、国内もまだ生保事業は成長すると思っています。より健康で長生きしたいというニーズがあります。グループの商品開発、営業力次第で、拡大余地があると考えています。国内から海外に軸足を移そうとは考えていません。

(構成=荒木涼子・編集部)

横顔

Q これまで仕事でピンチだったことは

A 入社5年目で運用部門時代に経験した1987年10月の「ブラックマンデー」です。約2週間、都内のホテルに泊まり込み、含み損が出たデリバティブ商品に対する証拠金などの対応に当たりました。リスク管理の大切さを心底学びました。

Q 最近買った物は

A 宮崎駿の長編漫画『風の谷のナウシカ』です。全7巻を箱入りセットで買いました。

Q 時間があったらしたいことは

A 大好きなヨーロッパに行きたいです。


事業内容:生命保険業

本店所在地:大阪市中央区

創立:1889年7月

自己資本:7兆8041億円

従業員数:7万4633人(2022年3月末現在、単体)

業績(21年度、連結)

 保険料等収入:5兆3860億円

 基礎利益:8721億円


 ■人物略歴

しみず・ひろし

 1961年生まれ。徳島県出身。県立城南高校、京都大学理学部卒業。83年日本生命入社。執行役員総合企画部長、取締役常務執行役員、取締役専務執行役員(資産運用部門統括、財務企画部担当)などを経て、2018年4月から現職。保険数理人(アクチュアリー)資格を持つ。61歳。

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