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経済・企業2022年の経営者

データを駆使し介護事業を強化 奥村幹夫・SOMPOホールディングス社長

Photo 武市公孝:東京都新宿区の本社で
Photo 武市公孝:東京都新宿区の本社で

奥村幹夫 SOMPOホールディングス社長

 Interviewer 秋本裕子(本誌編集長)»»これまでの「2022年の経営者」はこちら

── 2022年3月期決算は過去最高益を記録しました。足元の経営環境はどうですか。

奥村 昨年度は追い風が吹いた部分がありました。例えば、新型コロナウイルス感染拡大による行動抑制で自動車事故が減ったことなどです。ただ、コロナの感染第7波で入院保険金の支払いが増えているほか、自然災害も台風や雪害などがこれから本番を迎えるため、今期は相当マイナスに利くのではないかと思います。(2022年の経営者)

 運用については、現時点で悲観していません。例えば海外の金利上昇により、債券の含み損は出るものの、株なども合わせた投資リターン全体では見通しを上回る可能性もあります。

── 足元の円安や、世界的なインフレの影響をどうみますか。

奥村 インフレはやっかいですね。海外では、インフレになっても従業員の給与が上がり、保険料も引き上げる方向に進みます。一方、日本では国民の多くがインフレ下における経済や社会活動を体験したことがありません。しかし、日本でも輸入物価やエネルギー価格は上がっています。日本でインフレが顕在化したらどうするのか社内でも議論しています。

── 家計の負担が増える中、保険をどう考えるのかですね。

奥村 今は企業物価の上昇が主で、消費者物価にはあまり反映されていませんが、実際に上がってくれば、家計は相当、予防的な対応を取るのではないかと思います。その中で家計が保険をどう位置づけるのかは気になりますね。

── 自動車保険はどうでしょうか。自動車を持つ人が減り、収益に占める割合は減るでしょうか。

奥村 顧客の自動車保有台数がまだそれほど減っていないことに加え、事故防止の設備が車に装備されてきたことで、現在は自動車保険の収支はうまくマネージできています。しかし、超長期的には人口が減っていくことは明らかですし、保有から共有が増え、さらに自動運転が主流になった場合に、今までと同じようにはいかなくなっていくのだと思っています。

── 収益の柱である国内自動車保険の伸びが期待できない中、今後はどの分野に力を入れますか。

奥村 まずは海外市場に注力します。当社は1970〜80年代、日本企業が海外に進出し始めた際に一緒に出て行き、「企業の海外事業を支える」ことから始めました。現在は、割合でみれば現地の顧客が圧倒的に多く、海外事業全体の保険料の90%以上を占めています。まずは先進国の成長を取り込みたいです。欧米市場は、保険市場の成長率は日本に比べて高いです。

 中でも米国は人口が増えており、また、サイバー攻撃など新しいリスクもどんどん出ているので、新商品を開発できる市場です。また、新興国についても今後成長するとみており、アジアを中心に力を入れていきます。

M&A活用し海外拡大

── 国内と海外の利益割合はどう変化するでしょうか。

奥村 10年ごろは海外の利益はほとんどありませんでしたが、今は約30%が海外保険事業です。今後、全体を拡大しながら海外の利益比率は増えていくとみています。見通せる期間内では、海外を4割を超えるレベルには高めたいと思っています。そのためにはM&A(企業の合併・買収)も活用します。海外へは10年度以降、約1兆円近く投資してきましたが、これからも数千億円単位でリスクを取りにいきます。

── 介護事業にも注力しています。

奥村 今後、65歳以上の人口は数十年にわたり増えていきます。ですので、シニア向け事業を強化し、その中で介護事業も拡大します。同事業には15年に参入しました。

 現在は介護現場から取ったデータを使い、介護士1人当たり3人しかできない介護を4人にできないかの実証実験をしています。実現できた場合、国が定めた人員配置基準を、介護士1人で入居者4人の介護ができるよう緩和できる可能性があります。社会保障費全体は上げず介護士の給与が増えるような好循環のモデルを作りたいです。さらにその効率的な介護データを外販したいと考えています。

── 米データ解析会社パランティア・テクノロジーズと19年に資本提携しました。その一環ですか。

奥村 提携により、介護分野でバラバラに管理されていたデータの相関関係の分析やビッグデータ解析を始めています。例えば、高齢者が1日に食べた食事や睡眠時の呼吸や心拍などの介護記録をすべてデータ化して、解析できるようになりました。結果、介護従事者の負担軽減につながっています。

 介護事業者は介護士の採用に非常に苦労しています。デジタルやテクノロジーを使った介護が標準になれば、業界の見方が変わると思うのです。介護離職を1人でも減らすことは日本経済を支える上でも極めて重要だと思っています。

(構成=斎藤信世・編集部)

横顔

Q これまで仕事でピンチだったことは

A 30代で死を覚悟したことです。2001年に米国に駐在していた際、同時多発テロが目の前で起き、自分の人生の中で初めて「死ぬかも」と思いました。仕事面でも明日のことが見えず、厳しい時期でしたね。

Q 「好きな本」は

A ミノーシュ・シャフィク著『21世紀の社会契約』は何度も読み返しています。

Q 休日の過ごし方

A 目的を決めることはあまりなく、自分一人の時間や家族との時間をとってリフレッシュしています。


事業内容:損害保険や生命保険会社の経営管理など

本社所在地:東京都新宿区

設立:2010年4月

資本金:1000億円

従業員数:7万3676人(22年3月末時点、グループ全体)

業績(22年3月期)

 経常収益:4兆1674億9600万円

 経常利益:3155億1200万円


 ■人物略歴

おくむら・みきお

 1965年埼玉県出身。埼玉県立大宮高校卒業、筑波大学体育専門学群卒業。89年安田火災海上保険(現損害保険ジャパン)入社、2016年7月にSOMPOケア社長に就任。20年1月にSOMPOホールディングス執行役常務兼SOMPOインターナショナルCEO、21年4月に同執行役専務などを経て、22年6月から現職。56歳。

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