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経済・企業2022年の経営者

半導体メモリーの検査装置で成長=大塚信行・イノテック社長CEO

Photo 武市公孝:横浜市港北区の本社で
Photo 武市公孝:横浜市港北区の本社で

ROE8%は来年度に達成見込み

大塚信行 イノテック社長CEO

 Interviewer 秋本裕子(本誌編集長)>>>これまでの「2022年の経営者」はこちら

── イノテックとはどのような会社ですか。

大塚 半導体商社として創業した経験と知見を生かし、顧客が必要とする製品を販売したり、開発する、商社とメーカーの機能を持つ会社です。柱の3事業のうち、最大規模がテストソリューションで、主に半導体用の検査装置の製造・販売を手掛けています。次が半導体設計で、EDA(電子設計自動化ソフトウエア)で世界トップ級の米ケイデンス社の代理店が主な業務です。もう一つがシステム・サービス事業です。特定用途の専用ソフトウエアである「組み込みシステム」のほか、飲料など自動販売機の決済システムなど消費者に近い事業も手掛けています。

── 各事業の業績は。

大塚 2022年3月期の売上高と売り上げ総利益は、テストソリューションが144億円と53億円、半導体設計が124億円と26億円、システム・サービスが103億円と31億円でした。特定の部門が突出しているわけではありません。

── テスト事業で扱う機器はどのようなものですか。

大塚 半導体ウエハーの検査装置(テスター)と、台湾子会社のスターテクノロジーズが手掛ける「プローブカード」、信頼性試験装置などの製品群で構成しています。プローブカードとは、ウエハーに形成された電極に針を接触させてテスターに接続する器具です。テスターは、半導体が正しく製造されているか、仕様や性能を満たしているかを確認します。不良品を出荷すると、チップを外装するパッケージは高価なので、半導体メーカーには損が出ます。そのため、テスト工程は重要なのです。

── この事業の主な顧客は。

大塚 IC(半導体集積回路)は、アナログ、メモリー、ロジックに大別され、各タイプのICには専用テスターがあります。各用途で中身、構成、機能がまったく違い、当社はメモリー用のテスターを開発、製造、販売しています。

 メモリーは、DRAM(記憶保持動作が必要な随時書き込み読み出しメモリー)とNANDフラッシュメモリー(書き換え可能で電源を切ってもデータが残るメモリー)に大別され、当社はNANDフラッシュ向けを扱っています。日本ではキオクシア(旧東芝メモリ)が製造しており、当社にとって販売額が最大の納入先です。

 近年では中国メーカーにも納入しています。台湾のスター社は、台湾積体電路製造(TSMC)や台湾聯華電子(UMC)などにも販売しています。

自販機の決済機器好調

── イノテック製品の強みはどこにありますか。

大塚 ウエハー加工の微細化が進むと、テスターにも高精度が求められます。その分、テスターの価格が上昇し、半導体製造に占めるテストのコスト比率も増えています。当社は、ウエハーの中にテスト用の回路を埋め込んだ「BiST(ビスト)」という設計を採用し、より効率的に検査ができる製品を開発して提供しています。05年ごろから本格的に実用化しました。このシステムを採用した顧客は、テスターの調達コストを50%以上低減できたとみています。

── 自動販売機用キャッシュレス決済システムも手掛けています。

大塚 当社のシステムは、購入と決済の情報が無線で送信されるクラウド型のシステムです。自販機を設置する飲料メーカー側は販売状況をリアルタイムで受信して、補充の必要性などを把握できます。今年は猛暑で飲料需要が伸びており、当社システムに数千台の追加注文が来ています。

── 組み込みシステムでは自動車向けも手掛けていますね。

大塚 14年1月に買収したガイオ・テクノロジー(東京都品川区)が手掛ける、エンジン系ソフトウエアの検証システムが、自動車向けビジネスでは最大です。自動車に搭載されているソフトが正しく作られているのかを検証するシステムで、ガイオが業界標準を握っています。昨年は半導体不足によって自動車生産が落ち込みましたが、今はまた盛り返しています。

── 電気自動車(EV)時代に移行した場合、自動車向け事業に変化が出ますか。

大塚 ガソリン車用と同じ製品が使えるかというと、違うと思います。自動運転に必要なADAS(先進運転支援システム)などが普及すると、ソフトによる検証がより重要になります。従来の知見を生かしながら新しいサービスを提供できると期待しています。

── 23年度までの中期経営計画で営業利益30億~35億円の目標です。今年度予想は26億円ですが、あと1年で達成可能ですか。

大塚 中計では、株主資本利益率(ROE)8%を最終年度の23年度に達成することが主眼です。23年度に8%に達するには営業利益は30億~35億円は必要であると参考として出しています。現状では十分に達成可能だとみています。

(構成=浜田健太郎・編集部)

横顔

Q これまで仕事でピンチだったことは

A 2004年に半導体テスター初号機を顧客に納入しましたが、機能を満たしていませんでした。大問題となり約3カ月間、現場で対応に追われました。

Q 「好きな本」は

A スパイ物が好きです。フレデリック・フォーサイス著『ジャッカルの日』が印象に残っています。

Q 休日の過ごし方

A 米軍厚木基地(神奈川県大和市、綾瀬市)に行き、戦闘機を眺めることが最近のお気に入りです。


事業内容:半導体検査装置の製造・販売など

本社所在地:横浜市港北区

設立:1987年1月

資本金:105億円

従業員数:1642人(2022年3月末、連結)

業績(22年3月期)

 売上高:372億3800万円

 営業利益:25億8500万円


 ■人物略歴

おおつか・のぶゆき

 1962年岡山県出身。岡山県立成羽高校(現岡山県立高梁城南高校)卒業、京都コンピューター学院卒業。82年ヒューモラボラトリー入社、87年2月丸紅ハイテック・コーポレーション(現丸紅情報システムズ)入社を経て、91年4月イノテック入社。2012年6月取締役、18年11月専務を経て、21年4月から現職。59歳。

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