中古マンションの省エネリノベーション強化へ=俊成誠司・インテリックス社長
俊成誠司 インテリックス社長
Interviewer 秋本裕子(本誌編集長)>>>これまでの「2022年の経営者」はこちら
── 事業内容を教えてください。
俊成 中古マンションのリノベーション事業が主力で、売上高の7割を占めます。自社で中古マンションを仕入れ、内装設計や施工をして価値を上げて販売します。新たに交換した給排水管や電気配線などを対象に、最長20年間の保証もつけて販売しています。個人向けが中心ですが、大手不動産会社からの施工も請け負います。
── リフォームとの違いは。
俊成 住宅改修で使われるリフォームは、壊れた部分を直す修理や修繕のイメージです。これに対し、リノベーションは住宅を住む人の生活やライフスタイルに合った間取り、空間に変えていくのが大きな違いです。今は昔と比べて家庭内で子供の人数が減っています。部屋数を少なくしてリビングを広くしたりします。
── リノベーションの需要は。
俊成 過去、中古マンションには水回りや前の所有者の生活感などを気にする声がありました。価格が1000万円のマンションに、500万円のリノベーションをするのはどうなんだという見方もありました。しかし、金融機関がリノベーションマンションの価値を評価して融資を提供するようになり、広がりました。
同時に、当社が発足人の一員になり、2009年にリノベーション協議会を設立し、リノベーションの施工や検査方法などのノウハウを開示して、一定の基準を作ったことで普及していきました。現在は900社弱のメンバーが参加しています。そこでは、内装工事や部材の開示などを行い、業界の拡大につながっています。
人気の中古マンション
── 中古マンションの仕入れ状況はどうでしょう。
俊成 個人の売りたいというニーズに対して、今は買いたいという人が多いため、仕入れの競争が激化しています。市場データを分析しながら月2500〜3000件程度集まる情報の中から、100件程度をコンスタントに仕入れています。
── なぜ、それほどに中古マンションの人気が高まっているのですか。
俊成 まず、駅に近いなど立地条件が良いケースが多いですね。新築価格が高くなり過ぎて、供給量が減っていることもあります。中古でもしっかりリノベーションをした物件は資産価値が認められてきており、需要が高まっています。首都圏のマンション取引量は、中古の成約件数が新築の供給戸数を16年から6年連続で上回る状態です。不動産業界のデータでは、首都圏の中古マンション価格は、過去10年弱で1.7倍に上昇しました。
── 販売価格の戦略は。
俊成 当社の平均販売価格は2300万円で、購入層は40代が多いです。最近は夫婦ともに高収入のパワーカップルが増えているため、今後は5000万〜6000万円の高額帯の物件を増やしていく考えです。
── 資材価格が高騰しています。
俊成 木材価格が上昇しています。半導体不足でトイレの部材や給湯器も一時不足しましたが、今は大分、正常化してきました。商社と一緒に資材調達をするなど、大量仕入れで在庫を確保するようにしています。
── リノベーション以外の事業も手掛けています。
俊成 個人が住宅を売却し、その後も住み続けるというリースバック事業を始めて5年になります。住みながら資金ニーズがあるという人は多いですし、高齢者が施設に移る時の資金にも対応できます。さらに、都市部の大型不動産を小口化して資産商品として販売・管理・運営するアセットシェアリングも行っています。
── 省エネや環境対策にはどう取り組みますか。
俊成 脱炭素社会に向けたエネルギー政策の中で、住宅の省エネ化は必須です。あらかじめリノベーションの前と後の温熱計算というシミュレーションをしたうえで、最適な断熱材や内装で高断熱住宅にし、さらに換気システムとエアコンを導入した省エネリノベーション「エコキューブ」の販売に力を入れています。当社の渋谷区のマンションでは、冷暖房費の9割削減が可能になるとの試算もあります。今後はエコキューブの全国展開を加速します。
── 工事などの現場では人手不足が課題です。
俊成 社内と社外の人材を組み合わせて、施工ができるような体制が必要です。ITを活用し、人が必ずやらなくてはいけないところを分担しながら人材を育成します。現場の職人の奪い合いは既に始まっており、会社員でも職人になれるような仕組みも必要です。最近はスマホのアプリで資材が届くタイミングを管理できるようになり、従来と比べて仕事の効率は高まってきています。
(構成=桑子かつ代・編集部)
横顔
Q 30代はどんなビジネスパーソンでしたか
A 金融業界から転職し、仕入れ営業から始めました。最初はエアコンの室外機置き場がない物件を仕入れる経験も……
Q 「好きな本」は
A 城山三郎の『秀吉と武吉』です。海賊の頭領の生き様の描写が好きです。
Q 休日の過ごし方
A 娘との川遊びの後、スーパー銭湯に行くことです。
事業内容:不動産売買・不動産賃貸業・不動産コンサルティング
本社所在地:東京都渋谷区
設立:1995年7月
資本金:22億5300万円
従業員数:320人(2021年11月現在、連結)
業績(22年5月期、連結)
売上高:361億3900万円
営業利益:13億6400万円
■人物略歴
としなり・せいじ
1979年愛媛県出身。私立愛光高校卒業、2003年米ピッツバーグ大学経済学部卒業。04年みずほ証券入社、09年東京証券取引所を経て、11年インテリックスに入社し、15年執行役員、20年から現職。43歳。