国際・政治エコノミストリポート

旧統一教会を巡る問題 消費者庁、霊感商法などで新規制 寄付行為などは新法制定が有力 木村祐作

消費者庁は規制を強化する
消費者庁は規制を強化する

 7月8日に発生した安倍晋三元首相銃撃事件を受けて、政府は、いわゆる“霊感商法”への対策強化に向けた検討、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に関する対応を加速させている。中でも河野太郎消費者相は、同相就任2日後の8月12日、霊感商法に関する検討会(霊感商法等の悪質商法への対策検討会)の設置を、消費者庁に指示した。同検討会の作業は異例のスピードで進み、10月17日にはいくつかの提言を盛り込んだ報告書をまとめた(表)。検討会は最終回を除き、ユーチューブ(YouTube)で中継され、紀藤正樹弁護士や菅野志桜里弁護士らが、激しい議論を交わした。

 霊感商法とは、霊感を持つと名乗る人物が不安をあおり、“不幸にならないために”という口実で高額な商品・サービスを売りつけるような行為だ。霊感商法イコール旧統一教会というイメージを持たれる方も多いかもしれないが、多種多様であり、かなり幅広い事例が報告されている。

 政府の全国消費生活情報ネットワーク(PIO−NET、データベース)に登録された霊感商法の相談件数を見ると(図)、過去5年で1200~1500件に上っており、2021年度は1435件に達している。霊感商法の商品・サービス別では、「占い・祈祷(きとう)サービス」が全体の7割を占めている。契約金額の平均は約113万円と高額な水準だ。

 霊感商法は1980年代に入って社会問題に浮上。当時は高額な印鑑、数珠、つぼなどを買わせるやり方が多かったが、その手口は次第に多様化しており、10年ほど前は雑誌広告による「開運商法」が流行した。その典型的な手口は、「願いがかなう奇跡のブレスレット」といった商品を申し込むと、「間違った使用方法だと力が発揮できないので、電話してください」と書かれた説明書が一緒に送られ、電話をしてみると「あなたには除霊が必要」と告げられ、除霊をするために100万円以上を請求されるといったものだ。

 最近では、占いサイトの利用を発端とした被害が増加している。前述のPIO−NETによると、占いサイトに関する相談件数は19年に1837件に上っている。相談事例は以下のようなものだ。無料の占いサイトに登録すると、“一獲千金の鑑定士”を紹介するとの連絡が入り、「必ず宝くじの高額当選に導く」との説明を受ける。そして当選番号を聞き出すために、最終的に50万円以上を支払ってしまうというものだ。当選できないことはいうまでもない。

 これらの手法は、誰が見ても悪質な霊感商法だと理解できよう。

寄付と取り消し権

 一方で、「寄付」については霊感商法に該当するケースもあれば、そうでないケースもある。例えば、日ごろ利用する寺や神社に、自らの意思で少額を寄付するケースなどは問題がないだろう。しかし、不安をあおって、マインドコントロール下に置かれた人に寄付を求めた場合はどうか。旧統一教会を巡っては、多額の寄付が問題視されており、消費者庁の検討会でも、この部分の議論に多くの時間が割かれた。

 政府が霊感商法問題を放置してきたかといえば、そうでもない。消費者庁は18年、消費者契約法を改正し、霊感商法による契約を取り消せるようにした。例えば「あなたには悪霊がついていて、今のままでは病気が悪化する。この数珠を買えば悪霊が去る」というような説明を受けて購入した場合、消費者は契約を取り消すことができる。

 消費者契約法は、事業者との契約で発生したトラブルから消費者を保護するための法律だ。“不当な勧誘”によって結んだ契約の取り消しを認めている。“不当な勧誘”の例としては、「必ず値上がりする」として金融商品を買わせたり、「この装置を付けると電気代が安くなる」とうそをついて商品を買わせるなどのほか、恋愛感情を悪用した「デート商法」、不安をあおる「就職セミナー商法」などがあり、これらにも契約の“取り消し権”が適用される。

 消費者契約法の適用対象は、消費者と事業者が結んだ契約だ。霊感商法も契約をしていれば、取り消し権が認められる。不安をあおってつぼや印鑑を買わせたり、祈祷サービスを提供したりする場合は、契約とみなす…

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週刊エコノミスト

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