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追悼 小宮隆太郎 経済学者、東京大学名誉教授 政策当局も米国も経済理論で否定する「通念の破壊者」 後藤逸郎
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戦後日本の近代経済学の泰斗で、国際経済学論をけん引した東京大学名誉教授・青山学院大学名誉教授の小宮隆太郎氏が10月31日、老衰で東京都内の自宅で死去した。享年93歳。
「通念の破壊者」「偶像破壊者」として、東大経済学部の主流派だったマルクス経済学や八幡製鉄と富士製鉄の合併に伴う独占禁止法問題、日米貿易摩擦における管理貿易、日銀のゼロ金利・量的緩和政策の限界について、小宮氏は果敢に論争した。
青年期は関西弁で臆病者を意味する「あかんたれ」だったと自称する小宮氏が変わったのは、米ハーバード大学留学が契機だった。後に一橋大学学長となる都留重人氏の尽力で留学を延長し、ワシリー・レオンチェフ教授(1973年ノーベル経済学賞)に師事し、現実の経済問題解決に役立たない経済学の理論は無意味と学んだことだった。
旧ソビエト連邦や中国の計画経済が低迷していた70年、週刊エコノミストに約40ページにわたる「現代資本主義の展開──マルクス主義への懐疑と批判」を寄稿し、徹底的に主流派のマルクス経済学を論破した。内需拡大による経常黒字削減で日米貿易摩擦の解消を図った「前川リポート」に対し、マクロ経済学から経常黒字…
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週刊エコノミスト
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