経済・企業教え子が語る小宮隆太郎

小宮ゼミのロジカルな思考訓練が人生の財産――前田栄治・元日銀理事

大学3年時に入った「小宮ゼミ」を振り返る前田栄治氏
大学3年時に入った「小宮ゼミ」を振り返る前田栄治氏

前田栄治 ちばぎん総合研究所社長、元日銀理事

 論理的に物事を考え抜く──。私が、小宮ゼミでたたき込まれたことは、これだと思う。小宮隆太郎先生のゼミ出身者は「理屈っぽい」といわれるが、日銀に入って、この思考訓練がすごく役に立った。小宮先生は、理屈できちんと説明できないことには納得しない人だった。理路整然と物事を考えることをとても重視した。ロジカル・シンキングを求められるゼミだった。

 私がゼミ生だった1983年、先生は日銀に対して強い不満を持っていた。70年代のオイルショック時のインフレは日銀の金融政策に問題があったと主張。当時、日銀はインフレについて自分たちの責任回避に終始して、経済学に基づかないロジックで説明することに先生は不満を募らせていた。

 すなわち、インフレの原因とみられるマネーサプライ(現マネーストック、通貨供給量)の急増に関し、日銀は「それをコントロールできない」という主張だ。確かに日銀にマネーサプライを厳格にはコントロールできないけど、先生が言いたかったのはマネーサプライが大きく伸びないように、金利を早く引き上げるべきだったということだろう。

「通念の破壊者」と先生を評する人が多いが、論理的に説明できないことには納得しないゆえのことと思う。意見の違う人とも、是々非々で徹底的に議論する大切さをご自身が身をもって実践されていた。それが数々の経済論争を生んだ。経済学という狭い世界に閉じ籠もっているのではなく、現実に起きている経済をいかに論理的に説明するか。それを大事にされた。逆に、いくら理論できれいに説明できても、現実に起きていることと乖離(かいり)していたら、意味がないとも言われた。

 私がゼミ生の頃の先生は、中国に強い関心を寄せられ、中国の大学で講義もされた。戦後、高度経済成長を果たした日本に対して、文化大革命などで混乱し経済発展が遅れた中国に戦前の日中の歴史的背景を…

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