「換気」に注目したナイチンゲールの先見性を知る 本村凌二
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毎日、始発場からバス通勤で仕事場に通う私は、座った席の横の窓を開ける。コロナが始まったころから、感染症学者の飛沫(ひまつ)・接触感染説とヴィールス学者の空気感染説が対立しており、後者はとくに換気とうがいを強調していたことが印象深かった。おかげで、今のところ、コロナにかからないでいる。
向野賢治『ナイチンゲール「空気感染」対策の母』(藤原書店、2970円)は時宜にかなった書物である。19世紀半ば、ロシア帝国とオスマン帝国連合軍との戦争の地クリミアで傷病兵たちの看護にあたったナイチンゲール。彼女は病院の衛生環境の改善に努め、感染対策のパイオニアでもあったという。『看護覚え書』のなかで「看護師の第一の目的は患者が呼吸する空気を屋外の空気と同じくらい清浄に保つことである」と語り、「換気」に注目する。
ところで、この戦争は、ロシア軍との戦いであるとともに、コレラとの闘いでもあったという。連合軍として参戦したイギリス軍に従事して、ナイチンゲールは各地の病棟で働いている。イギリス帰国後、『病院覚え書』で、ボスポラス海峡沿いのスクタリとクリミア半島のバラクラバの病院の感染率を比較しながら、彼女は述べ…
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週刊エコノミスト
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