Jリート 分配金ならオフィス系 割安感が強い総合型・複合型 関大介
利回り投資商品として位置づけされることも多いJ-REIT(Jリート)市場は、米国の長期金利水準の上昇にもかかわらず、堅調な値動きが続いている(図1)。外国人投資家は、2021年から22年前半までJリート価格上昇をけん引してきたが、米国10年債利回りがJリートの利回りと同程度まで上昇しているため、今後は大幅な買い越しが期待できない。
したがって、23年の価格を左右する最大の要素は、日銀の政策変更の有無と考えられる。その理由は、不動産売買市場への影響が大きいためだ。
不動産賃貸市場はコロナ禍の影響も受け、主力のオフィスも含めて弱含んでいる用途が多い。一方で好調な不動産売買市場の恩恵を受け、物件売却益を計上することで分配金の安定や増加を実現している銘柄も多数ある。
もし日銀が金融政策を変更し、利上げを行うことがあれば、不動産売買市場が軟調に転じる可能性がある。この場合、安定的な分配金に注目して投資を拡大している国内投資家のJリート売りを誘引することになるだろう。
以下で、代表的な用途別に23年の投資ポイントを見ていこう。
オフィス系 分配金に注目
日銀の政策次第だが、投資家にとって、注目の用途がオフィス系銘柄だ。
オフィス賃貸市場は、コロナ禍による景気低迷とリモートワークの影響を受けて東京都内の空室率が上昇している中、23年に東京都心部で大規模ビルの大量供給が予定されている。オフィス市場のさらなる悪化の懸念もあって、オフィス系は割安感が強い銘柄が多い。
また、すでに物件売却益による内部留保を潤沢に持つ銘柄や、物件売却を複数期にわたって行うことで分配金の安定を図っている銘柄もある(図2)。日銀の政策変更がなければ、不動産売買市場の高騰状況が続く可能性が高い。
つまり、賃貸収益の先行きは厳しくなる可能性はあるが、分配金という面では売却益により安定感が高い銘柄が多い。
この点に投資家が注目すれば、価格上昇の可能性が高い用途と考えられる。
物流系・住宅系 高い収益の安定性
「米国の長期金利の低下傾向が続く」と考える投資家にとって有望な投資用途が、物流系や住宅系の銘柄だ。この二つはコロナ禍でも賃貸収益の安定性が高く、20年3月のコロナショック後、いち早く価格が回復してきた用途だ。
価格の回復は外国人投資家の買い需要を取り込んだもので、分配金利回りは低くなっていた。その中で米国長期金利が上昇したため、22年は価格が下落した銘柄が多い。言い換えれば、23年以降、米国の長期金利が改めて低下傾向となれば、価格上昇の余地がある。収益の安定性は高いため、長期投資向きともいえる。
さらに物件売却益への依存が少ない銘柄が大半を占めるため、日銀の政策変更リスクに対して、比較的強いのも特徴だ。
商業系・ホテル系 インバウンド期待
商業施設とホテルは、コロナ禍の影響を賃貸収益で受けた用途だ。一方で商業施設特化型の銘柄は、ショッピングセンターやスーパーなど郊外施設を中心に保有しているため、コロナ禍の影響が少なかった。
しかし外国人投資家は、米国での商業施設の供給過剰という状況を考慮し、日本での商業施設投資には慎重だ。従って23年も価格上昇の期待はできないが、収益の安定性と高い利回りが期待できる長期投資向きといえるだろう。
また、ホテル系銘柄は収益の回復が順調に進んでいるが、すでにそのことが銘柄の価格面には織り込まれているだろう。具体的には、ホテル系銘柄の価格は、大半の銘柄で分配金がコロナ禍前の75%程度まで回復する水準に達している。
従ってホテル系銘柄は、「23年中にコロナ禍前の水準を回復する」と見る投資家や、「中国人を中心としたインバウンド(訪日客)の大幅な回復を想定する」という投資家に向いている。
総合型・複合型 割安感が強い
さまざまな用途に投資する総合型・複合型はリート市場が最も大きい米国リートでは少ないこともあり、外国人投資家に人気が薄く比較的割安感が強い銘柄が多い。
特にホテル保有比率の高い銘柄は、ホテル特化型がすでに割高感がある中では、相対的に割安な状態となっているため、「ホテル収益の回復を見込んでいる」という投資家にとって有望な銘柄だ。
この場合、保有ホテルの賃料体系が、固定賃料中心ではなく、ホテルの収益によって変動する(変動賃料)の比率が高いほうが分配金への寄与は大きいという視点で判断することが重要だ。
また、オフィス比率が高い銘柄が多いため、「日銀の政策変更リスクが低い」と考える投資家にとっては割安感がある状態だ。住居や物流比率が高い銘柄もあるため、投資先のポートフォリオ構成を確認して投資することが重要だろう。
(関大介・アイビー総研代表)
週刊エコノミスト2023年1月10日号掲載
2023 投資のタネ リート 分配金ならオフィス系 割安感が強い総合型・複合型=関大介