経済・企業

米金利上昇なければ、狙い目なリートは?=関大介

リート 米長期金利上昇なければ分配金多い商業系が狙い目=関大介

 2022年のJ−REIT(Jリート)価格を展望する上で、米国長期金利の先行きに対する判断は欠かせない。その理由は、米国長期金利の大幅な低下が、Jリート価格の上昇をけん引しているためだ。(2022投資のタネ)

 Jリート価格を代表する指数である東証REIT指数は21年4月以降、2000ポイントを超えて推移している。19年7月から20年2月までと同様の水準であり、Jリート市場は価格面ではコロナショックの影響を払拭(ふっしょく)したことになる。

 一方で東証REIT指数2000ポイントは長らく「壁」となっていた。リーマン・ショック後で見れば、13年4月の日銀による異次元緩和や16年2月のマイナス金利策導入が始まっても壁を超えられない状態が続いていた。

 19年7月に壁を超えた背景には、上昇基調にあった米国の長期金利低下があったと考えられる。米国の10年債利回りで見れば、2・0%以下の水準に低下するのに歩を合わせて東証REIT指数は2000ポイントを突破(図)。21年4月以降も米国10年債利回りが低い水準で推移していたことで、Jリート価格が回復したと考えられる。

 従って、現在のメインシナリオである、米国の金融正常化に伴い米国10年債利回りが、2・0%を超えて上昇する状態になれば、19年7月前の水準である東証REIT指数1800ポイント程度まで下落する可能性が高いだろう。

高水準の内部留保

 一方で米国の景気先行きへの懸念がくすぶり、米国の長期金利は上昇基調とはならないというシナリオに立てば、Jリート価格上昇の余地はありそうだ。その理由として、コロナ禍の影響が直撃したホテル系銘柄を除けば、Jリートの分配金(株式の配当金に相当)は、安定または増加している銘柄が多いためだ。

 例えば、市場を代表し時価総額が1兆円を超える日本ビルファンド投資法人(NBF)の1口当たり予想分配金は、22年6月期に1万2500円と上場来最高となる見込みだ。つまり、景気の先行き懸念が強い状態になれば、NBFのような安定した分配金に注目する投資家が増える可能性が高いと考えられる。

 さらに、このシナリオが実現した場合には、コロナ禍後の分配金の安定や増加をもたらしている物件売却益が今後も期待できるという側面もある。米国の長期金利が低い状態が続くことによって、外国人投資家が日本の不動産の利回りに注目する状態が続き、不動産売買市場の高騰が続くためだ。

 具体的には、NBFはオフィスだけに投資する銘柄であり、空室率の上昇や賃料単価下落という賃貸市場悪化の影響を受けている。しかし、物件売却益やその内部留保を活用し分配金水準を向上させており、さらに売却益による内部留保も22年6月期には、128億円まで増加する見込みである。

 このように複数のシナリオが考えられる中で注目したい投資用途は、商業施設中心に投資する銘柄だ。商業系銘柄は、コロナ禍の悪影響を懸念している投資家がまだ多い用途であるため、比較的分配金利回りが高い。しかし、分配金が安定している点から投資妙味がある状態と考えられる。収益安定性では物流系や住居系が有力だが、分配金利回りが低すぎる銘柄が多いため、価格下落があった場合には投資を検討したい。

(関大介・アイビー総研代表)

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