河竹黙阿弥が翻案した世話物に人気の坂東弥十郎が初挑戦 小玉祥子
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舞台 人間万事金世中 強欲勢左衛門始末
歌舞伎作者が明治に入り、当時の世相・風俗を織り込んで書いた世話物は「散切物(ざんぎりもの)」と呼ばれる。ちょんまげを切った頭髪の人物が登場することからの命名である。
歌舞伎座の「寿 初春大歌舞伎」第二部で上演中の「人間万事金世中(にんげんばんじかねのよのなか)」もその一つ。幕末から明治にかけての大作者・河竹黙阿弥が英国の作家リットン作の喜劇「money」を翻案した作品で、1879年に新富座で初演された。
辺見勢左衛門は裕福な商人だがケチで情味に薄い。商売に失敗した亡き弟の遺児である恵府林之助(えふりんのすけ)を引き取り、酷使していた。だがその林之助は、子のいない親族の遺産を相続することになった。勢左衛門は態度を一変させ、娘を林之助に嫁がせようと企む。
今回は「強欲勢左衛門始末」の副題が付いている。親族が集まっての遺言状公開、現代の弁護士に相当する「代言人」や「蒸気船に乗った」人物が登場するなど、当時の最新風俗が織り込まれている。
近年では二代尾上松緑、中村富十郎、中村梅玉が演じてきた勢左衛門に、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の北条時政役が評判となった坂東弥十郎が初挑戦するのが話題だ。
弥十郎が歌舞伎座の正月公演で主演するのは初めてという。
「江戸の世話物でも十分通用するお芝居が『散切物』というところにおもしろさがある気がします。僕ならではの…
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